“古い自分”を脱ぎ捨てて、さあ、春のスタートを!

2012年4月8日(日)更新:2
【名字の言】
 勉強する。一晩たつと、少し忘れる。1週間、そして1カ月もすると、記憶の多くは薄れてしまう。が、嘆くなかれ。それが人間の素晴らしい特質なのだ――と、脳科学者の池谷裕二さんは指摘する(『記憶力を強くする』講談社ブルーバックス
 脳の記憶は「ファジー記憶」。この曖昧さは、生命にとってきわめて重要らしい。なぜなら、生活している環境は、日々刻々、変化するから。臨機応変に対処することが欠かせない。それを可能にするのが、ファジー記憶であるという
 他方、より原始的な動物ほど曖昧な記憶が少なく、厳密な記憶の割合が多い。よって、失敗しても学習せず、結局は命を落としてしまいがち。「ファジーな記憶こそが高度な思考や創造を生み出す源泉」であり、それが脳に「人間性」を与えている、と池谷さんは強調する
 そう考えてみれば、世に言われる“原理主義”も、脳の柔軟さ・曖昧さを失った結果なのではあるまいか。仏法では「随縁真如の智」を説く。日々新たな決意で、しなやかな智慧を発揮しつつ、自他共の幸福のために歩みたい
 ニーチェいわく「脱皮することができない蛇はほろびる」(氷上英廣訳)と。“古い自分”を脱ぎ捨てて、さあ、春のスタートを!(聖教新聞 2012-04-08)