「ただ心こそ大切なれ」

2014年1月9日(木)更新:2
【名字の言】
 「これを見てほしい」。壮年が地面を指さした。案内してもらった場所は横断歩道。その両端に2センチほどの段差があるが、一部が滑らかな傾斜になっている▼車いすのタイヤが通るための道だった。歩くには、ほとんど気にならない段差も、車いすだと難渋する。傾斜は「段差で転倒がないように」と壮年が行政に訴え、実現したものだった。「息子がいるから気づけました」と、壮年はほほ笑んだ▼子息は交通事故に遭い、車いす生活を送る。事故当時、近くにいた父は、自分を責め、悲嘆に暮れた。立ち上がれたのは、唱題と、家族のような同志の励ましの中で心に無限の希望を創り出す信仰の力を実感したからだった。過去を悔いることをやめ、現実と向き合い、今は、親子で命の大切さを訴える講演も行う▼「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えない」(内藤濯訳)。有名な『星の王子さま』の一節を思い出す。同じものを見て、同じ事実に遭遇しても、見る人の心によって、見える”風景”は違ってくる。”心の眼”を養い、人に同苦する力、絶望の中にも明日への希望を見いだす力を培うために、信仰はある▼「ただ心こそ大切なれ」(御書1192ページ)。これほど明快で、これほど深い意味を持つ言葉もない。(将)
   (聖教新聞 2014-01-09)