仏道修行においても、“己心の魔”に負けないことが根本

2014年2月24日(月)更新:3
【名字の言】
 冬の花形スポーツの一つ、箱根駅伝を主題にした、黒木亮氏の自伝的小説『冬の喝采』には、早稲田大学の名物監督・中村清の信念が記されている。「天才は有限、努力は無限」と▼ロシア・ソチ冬季五輪の熱戦を見て思い出した言葉である。10代の若い力の大飛躍、不惑の年を超えての偉業など、多大な感動を届けてくれた。一方、“オリンピックの魔物”の仕業か、満足のいかない成績で涙をのんだ選手もいた。だが、いずれも、努力を重ねて母国の代表となり、世界最高峰の祭典に参加できた栄冠には違いない▼見事、重圧を乗り越えて金メダルを手にした、男子フィギュアスケート羽生結弦選手は、被災地・仙台市をはじめ多くの人々の思いを胸に、華麗な演技で世界中を魅了した▼19歳の彼は、オリンピックとは「自分の中にある魔物」への挑戦と断言していた。自分には力がないと卑下する“魔物”、きょうぐらいは練習を休みたいという怠惰な“魔物”……▼仏道修行においても、“己心の魔”に負けないことが根本とされる。全ては自分との戦いである。しかし、決してそれは孤独、孤立を意味しない。一流の生き方を目指す人には、地域の応援、仲間の支え、何より師匠の力強い励ましがある。(杏)

   (聖教新聞 2014-02-24)