「桜への思い」とは「平和への思い」

2012年4月7日(土)更新:4
【名字の言】
 日本の昔話は第2次大戦直後、進駐軍から封建的思想の温床と見なされた。その代表例が「桃太郎」である
 各地で語り継がれてきた桃太郎は、明治時代に児童文学者の巌谷小波(いわやさざなみ)らの手により現在の形に整えられた。犬と猿、雉(きじ)と共に鬼退治に向かう、あのおおらかな勧善懲悪(かんぜんちょうあく)の物語である
 しかし軍靴の響きが高鳴るにつれ、「日本一の桃太郎」は愛国心の象徴に仕立て上げられた。戦争中のアニメーション映画では、桃太郎が飛行機や潜水艦に乗り、まなじりを裂いて連合国と戦っている(『松居直自伝』ミネルヴァ書房
 桃太郎だけではない。桜も軍国主義に利用された犠牲者である。散り際の潔さから“軍国の花”と称された。巡り来る万朶(ばんだ)の春。春風に舞う桜花に、戦火に散った人を偲ぶ悲しみが消えることはない
 池田名誉会長はかつて、戦時中に抱いていた夢を綴った。――いつの日か、日本中、世界中に桜の木を植えて、皆が「平和の春」を思う存分、楽しめるようにしたい、と。「桜への思い」とは「平和への思い」でもある
 春の嵐が去り、列島は薄紅に染まりゆく。爛漫の桜のトンネルを、子どもたちが元気よく駆けていく。その笑顔が永遠に輝くように! 平和の松明を消してはならない。 (聖教新聞 2012-04-07)