新しき地球社会の建設を

2013年5月21日(火)更新:3
【池田SGI会長の第38回「SGIの日」記念提言に寄せて】
宝塚大学教授 朝野富三氏 未曾有の危機の本質をとらえ共生への具体的な道筋を提示》
ノーベル平和賞を受賞したケニアの環境運動家、ワンガリ・マータイ博士を2005年2月に日本にお招きした際、毎日新聞社の責任者として、池田会長との対談の場に同席する機会があった。
 魂と魂の格闘、火花散る対話を目の当たりにして胸が熱くなった。“民衆のために何かしてあげたいという気持ちでなく、民衆と共に汗する”とのマータイ博士の言葉は、そのまま池田会長の思いでもある。
 苦しむ人たちに寄り添い、あきらめることなく解決の道を一緒に求め続ける――今年の提言でも、そのことの重要さが繰り返し訴えられていた。
 核兵器の廃絶は人類の悲願であるが、遅々として進んでいない。その意味で、今回の提言で“2030年までに世界全体の軍事費の半減”との提案が盛り込まれていることを高く評価したい。
 軍事費の総量規制を核兵器の問題とセットにすることによって、恒久平和を実現する道筋をつけていく。そのための具体的なステップも示されており、核兵器を人間の本質に根差す絶対悪と位置付ける池田会長の並々ならぬ決意と願いが読み取れた。2009年の核廃絶提言での「国際規範の確立」、2010年の提言での「人道的活動としての軍縮」の呼び掛けを、さらに前へ進めた提案として賛意を表したい。
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●また、日中関係の課題について、「断じて友好の纜(ともづな)から手を話してはならない」との訴えは反響を呼んだ。
 「時間はかかっても乗り越えるための道は必ず見えてくる」「順調な時よりも逆境の時のほうが、両国の絆をより本格的に深める契機となる可能性がある」と述べ、ハイレベルの対話の場を早急に設けることを呼び掛けた提案は、日中両国が東アジアの新時代を築く転換点に立っているとの認識と、平和と共生を時代の大潮流にするためには「原則の堅持」と「対話」が不可欠であるとする、池田会長の一貫した姿勢に基づくものであろう。
●「自他共の幸福」を考えた行動が今こそ求められるとの指摘が、私の胸に強く響いた。


羽衣国際大学教授 大坪勇氏 貧困と紛争解決の糸口示した「苦楽を共にする」思想に感銘》
●私の専門である社会保障社会福祉の分野では、「絶対的貧困」という概念がある。この概念が生まれたのは19世紀のイギリスで、産業革命に伴う都市の荒廃期であった。その「絶対的貧困」が2世紀も経た現在でも解消されていないことは、非常に不思議で、由々しき問題であると言わざるを得ない。産業革命以来、人類は幾つもの素晴らしい科学技術を手にし、生産量を拡大させてきたにもかかわらず、なぜ貧困はかくも世界で拡大し続けているのだろうか。
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●また今回の提言では、先進国における格差社会の問題についても論究されている。
 これは私の専門分野では「相対的貧困」の概念で捉えられるテーマだが、社会全体が豊かであるのに、その社会の生活水準の平均から取り残されてしまった場合、その人々の生活は地獄のような苦しみを伴うものになってしまうことが問題となっている。
 日本でも「相対的貧困」は確実に拡大しており、特に若い世代の間で深刻化している。いわゆる非正規労働者の激増で、日本では労働者の3人に1人が非正規労働者になってしまっているのだ。
 多くの若者たちが正規の仕事に就くことができず、正規労働者との賃金格差はどんどん拡大し、年収200万円以下の若年労働者が増加している。
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●池田SGI会長が釈尊と弟子との逸話を通し、「仏道を行じるとはほかでもない。目の前で苦しんでいる人、困っている人たちに寄り添い、わが事のように心を震わせ、苦楽を共にしようとする生き方にこそある」と強調されていることに、私は深い感銘を受けた。


神戸市外国語大学名誉教授 家正治氏 「平和」と「人権」の21世紀を開く実現すべき「生命尊厳」の主張》
●提言では、「生命の尊厳」の重要性を訴えながら、平和に関する問題と人権文化の建設について具体的な提案をされています。
 私は国際法が専門ですが、グロチウスが言う“いかに平和を確保するのか”が国際法の課題です。
 カントが1795年に『永遠平和のために』で永遠平和のための予備条項の一つとして“常備軍は時代と共に全廃されなければいけない”と訴えていましたが、それはいまだ実現していない。むしろ世界の軍事費は膨大な額にのぼっています。
 なかでも池田会長は核兵器の廃絶に焦点を当てながら、北東アジアに非核兵器地帯を設置することなどを呼び掛けておられますが、非常に重要な提案だと思います。
 現在、国連で「平和への権利宣言」の審議が進んでいるように、平和は今や単なる“国家レベル”の問題にとどまらず、民衆の運動が盛り上がった結果として、“個人の権利のレベル”の問題として論じられるようになっています。
 その意味で池田会長が提言で強調しているように、グローバルな民衆の連帯を広げていくことが、ますます大切になってきているのです。
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●池田会長が人間生命の無限の可能性をどこまでも信頼しつつ、格差社会の克服に向けて人々を勇気づける“励ましの提言”をされていることに深く感動しました。
   (聖教新聞 2013-05-20)