命に刻んだ「師弟の原点」

2013年7月17日(水)更新:4
【名字の言】
 地域の友が語っていた。93歳の父が倒れ、病院に運ばれた。薄れゆく意識の中、絞り出した言葉は「逃げろ」「伏せろ」「助けてくれ」。“戦争の情景だ”――友はがくぜんとした。中国戦線に赴いた父は、それを一度も話そうとしなかった。だが、70年を超える歳月も、忌まわしい記憶を消すには至らなかった▼治療が奏功し、快方へ向かう。父は寝言で「やらなきゃ分からないぞ」「まず3カ月やってみろ」。今度は夢の中で、人の幸福を願い、仏法を語っていた。自らの人生を追体験するような出来事だった▼魂の奥底に刻まれたものが、時を経て奔流のように現れ、自らを突き動かすことがある。エマソンが「ひとの行なうことは、そのひとに元来そなわっていることだ」(酒本雅之訳)と洞察したように▼21世紀へ、世界広布の基盤の完成に命を注ぎ、戸田第2代会長の構想を全て実現してきた池田名誉会長。2001年以降のスピーチを繙くと、語り続けるのは恩師の言葉であり、絶体絶命の師を支えた青春の苦闘と喜びであることを知る。命に刻んだ「師弟の原点」である▼人生模様はさまざまだ。が、転機のたびに立ち返る、魂の原点をたもち得たことに勝る幸福はない。ここに、創価の師弟の誇りがある。(会)
   (聖教新聞 2013-07-17)