立正安国論

世皆正に背き人悉(ことごと)く悪に帰す、故に善神は国を捨てて相去り聖人は所を辞して還(かえ)りたまわず、是れを以て魔来り鬼来り災起り難起る言わずんばある可からず恐れずんばある可からず。(P17)


傍(ぼう)を好んで正を忘る善神怒を為さざらんや円を捨てて偏(へん)を好む悪鬼便りを得ざらんや、如(し)かず彼の万祈を修せんよりは此の一凶を禁ぜんには。(P24)


微(しるし)前に顕(あらわ)れ災い後に到る(P25)


弟子一仏の子と生まれて諸教の王に事(つか)う、何ぞ仏法の衰微(すいび)を見て心情の哀惜(あいせき)を起さざらんや(P26)


心の及ばざるか理の通ぜざるか、全く仏子を禁(いまし)むるには非ず唯偏(ひとえ)に謗法を悪(にく)むなり(P30)


法水の浅深をしん酌(しゃく)し仏家の棟梁(とうりょう)を崇重せん。(P31)


鳩化して鷹と為り雀変じて蛤と為る、悦(よろこば)しきかな汝蘭室の友に交わりて麻ほの性と成る、誠に其の難を顧みて専ら此の言を信ぜば風和らぎ浪(なみ)静かにして不日に豊年ならん、但し人の心は時に随つて移り物の性は境に依つて改まる、たとえばなお水中の月の波に動き陳前(じんぜん)の軍(いくさ)の剣に靡(なび)くがごとし、汝当座に信ずといえども後定めて永く忘れん(同)


三界は皆仏国なり仏国其れ衰んや十方は悉く宝土なり宝土何ぞ壊れんや、国に衰微無く土に破壊(はえ)無(なく)んば身は是れ安全・心は是れ禅定(ぜんじょう)ならん、此の詞(ことば)此の言(ことば)信ず可く崇(あが)む可し。(同)