“生きる価値”伝えるSGIの励ましの姿

【2011 識者が語る 時代を開く力がここに】
──グローバリゼーション時代、世界で発展している宗教であるSGI(創価学会インタナショナル)に注目し、2005年からアメリカ合衆国で研究を続ける大阪府立大学の秋庭裕教授(宗教社会学)に伺った。
●アメリカでSGIが発展した理由の一つに、「この世で幸せになる(一生成仏)」という思想があると思います。
アメリカ社会の基礎にあるユダヤ=キリスト教は、多少乱暴に言えば、結局はこの世で“ない”ところに救いを求める宗教です。そのなかで日蓮仏法=SGIは、現世を生きることを肯定し、この世で生きることに使命があると説いたわけです(願兼於業)。
そして、それは、白人や黒人という人種・民族を問わず、誰にでも平等に説かれました。それまで差別されてきた人々を肯定したのが、SGIだったのです。
アメリカでSGIの会館に行けば、さまざまな民族の人々が集まっていることが分かります。
初めてSGIの会館を訪れた人は「白人も黒人も一堂に集う、こんな光景は見たことがない」と衝撃を受け、興味を抱くわけです。
アメリカにおいてSGIは、何より「民族が出会う場」を提供しているのです。アメリカ合衆国における「異体同心」ということができるかもしれません。
このように、あらゆる人々をつなぎ合わせるということが、SGIが果たしている重要な役割です。
日本の創価学会についても同じことが言えると思います。
近年、町内会やPTAの役員をする人が減っているなかで、創価学会員が、宗教活動以外のそのような場で、献身的に活動をしています。
そのような場で作られた、人と人の結びつきが、このたびの東日本大震災のような災害時に発揮されたのではないでしょうか。
震災後、会員が迅速に救援活動を行ったそうですが、普段からの活動の蓄積があったからこそだと思います。
災害時は、人々が団結をしなくてはならない時です。常日頃は何もないところから、非常時に行動を起こすのは困難なことでしょう。今回は会員が普段から地域に根を張って活動をしてきた証しであると言えるでしょう。
震災後、聖教新聞の報道を通して、救援や支援に当たる会員の様子を拝見しました。
時間の経過とともに、記事の中に、「変毒為薬」や「冬は必ず春となる」などの言葉を拝見しました。これらの信心の言葉こそが、被災された方にとって大きな励ましになったのではないでしょうか。
物質的な支援だけではなく、精神的な支援を行い、“生きることに価値がある”というメッセージが発せられることで、被災者は大きな励ましを得たのだと思います。
そういった意味で、創価学会による災害支援は、じつに大事なものであったと思います。
震災前まで、「無縁社会」という言葉をよく聞きました。震災があってかすんでしまった感がありますが、本質は変わっていないでしょう。
大都会の人混みの中で感じる孤独は、過疎地で感じる孤独よりも深刻かもしれません。
そのような社会で人と人とのつながりを思う時、宗教の重要性に気付きます。言い換えれば、人を孤独から救うのが宗教の大切な役割なのです。
人と人をつなぐことができる。宗教のこの特質は今日、とても貴重なものなのです。
日蓮仏法、SGIの魅力もそこにあります。
SGIの信心をする人は、はじめは顕益(けんやく)という、目に見えて現れる功徳を求めて勤行・唱題をするのだと思います。
その一方で、自分の願いが叶うと、それを「他の人にも伝えたい」と思うようになるはずです。つまり、そこに利他の精神が生まれます。
自分がご利益(りやく)を受けることも大事ですが、他者の役に立つという経験こそが信心のいっそうの原動力になっているはずです。
座談会に集まって、皆で話をするのもそうでしょう。白人と黒人が一緒になって会合の準備をするのもそうです。性格が合わないと思うような人がいても、一緒に一つのことをやるわけです。従来、そういう経験がなかったわけですから、それが何より大事なのだと思います。
利他の心をもって、人と人との結びつきを作り上げるところに、SGIの魅力があると思います。
今日、創価学会=SGIに、世界192ヵ国・地域という、他に類を見ないグローバルなネットワークがあることは大いに称賛に値するでしょう。今後は、このネットワークをフルに活用してほしいと思っています。
一般会員の草の根交流を活発にすることで、グローバリゼーション時代における「ワールド・ピース」が個人のレベルまで浸透するのではないでしょうか。
日本の真の国際化のためにも、「創価学会の人は視野が広いな」「世界を知っているな」と言われるような人材をさらに排出していただくことを期待しています。
その意味で、創価学会が教育に力を入れていることは、本当に素晴らしいことです。
また、今日の日本は、楽観的な状況ではありませんが、創価学会の皆さまには、地域や職場、それぞれが所属しているそれぞれの場所で、さらに力を発揮してほしいと思います。創価学会の活動で得たものを、会の外にも還元してほしいと思います。
アメリカなどの海外と違って、日本における、創価学会へのワンパターンな評価がそれを阻んでいるのかもしれません。しかし、私は、日本社会に、創価学会があることを誇るべきだと思っています。 (聖教新聞 2011-09-21)

9月30日更新:3