人類が一体となって諸課題に応戦せよ

2012年5月7日(月)更新:2
【トインビー対談開始40周年と池田SGI会長の足跡(中)】
〈大宇宙を見つめて〉
●この世における人間の一生は、善かれ悪(あ)しかれ、宇宙そのものに何らかの影響を与え、この世での人生に正反(せいはん)いずれかの価値をもたらすものです。あらゆる生物は、“カルマのバランス・シート”に記帳を重ねています。(トインビー博士)
●宇宙について考えることは、重大な意義があると思います。そうした宇宙観が、われわれの生き方に少なからぬ影響を与えるからです。宇宙は生命を誕生させる“生命の海”であると考えます。(池田SGI会長)
●博士の持論である、宇宙の背後にある“究極の精神的実在”について、SGI会長は、西洋の宗教ではそれを“神”という擬人的存在と捉えたのに対し、大乗仏教では“法”として捉えていると解説。博士も“法”として捉えるほうが説得性があると賛同した。

〈新しい宗教の役割〉
●私は新しい種類の宗教が必要だと感ずるのです。新しい文明を生み出し、それを支えていくべき未来の宗教というものは、人類の生存を いま深刻に脅かしている諸悪と対決し、これらを克服する力を、人類に与えるものでなければならないでしょう。(トインビー博士)
●西洋の危機も東洋の苦境も ともに救いきれる宗教、現在から未来にかけての一切の問題に、人類が一体となって取り組むのに役立つ宗教でなければなりません。このような普遍的な宗教を見いだすことこそ、われわれの、最大の課題であると考えるのです。(池田SGI会長)
●シュペングラーの『西洋の没落』に記されたごとく、全世界的に普及した西欧文明は衰退しつつあった。その歴史的背景として、博士は、西欧の伝統宗教に取って代わる、1.科学的進歩への信仰 2.ナショナリズム国家主義) 3.共産主義という三つの“宗教”の台頭を指摘する。
 その上で博士は、現代の諸悪として「貪欲」「戦争と社会的不公正」「人為的環境」の3点を挙げた。SGI会長は、その3点を仏法の説く「五陰世間」「衆生世間」「国土世間」と対比させ、その変革のためには一人一人の内面の変革が求められていると訴える。

〈いかに貪欲を抑えるか〉
大乗仏教――その中でも法華経の哲学――では、欲望の消滅を目指すのではなく、宇宙と自我との調和・融合を説き、そこに人生における理想的な幸福があると説いたのです。(池田SGI会長)
●貪欲性は、“小我”が自らの目的のために宇宙を利用しようという欲望です。貪欲の反対が慈悲です。この慈悲を実践することによって、“小我”は現実において“大我”になることができるのです。(トインビー博士)
●仏法では、慈悲は“抜苦与楽”を意味するとされています。“抜苦”は“同苦”(苦しみを同じくする)のうえに成り立つものです。私は、このような“同苦”が根底にあってこそ、人間における連帯も成り立つのではないかと思うのです。(池田SGI会長)
●人間の際限なき貪欲を制御する方途とは――両者はその鍵を、大乗仏教が教える「大我(宇宙的・普遍的自我)」と一体となった生き方に見いだす。具体的には、慈悲を根本とした“利他”の実践を通し、自己中心性を乗り越えていく生き方が語り合われる。
●1985年から数年間、私は対談集を研鑽するイギリスSGI青年部の「新世紀グループ」に所属していました。ロンドン市内のリッチモンド会館を中心に、50人ほどの青年部員が共に勉強会を行っていたのです。
 会合では、一人が範囲となっている箇所を読みあげ、それについてコーストン理事長(当時)が講義。その後の質疑応答では次々に手が挙がり、さまざまな課題について意見が飛び交いました。
 ある日、理事長が最後に語ったのです。
 「皆さん、素晴らしい意見をありがとう。それでは一体、誰がそうした問題点を解決していくのですか」 理事長の真剣な問いに皆、はっとした表情になりました。
 そして「それが一番大事なのです。それに挑戦しているのが池田先生なのです」と。
 イギリスは“学問と議論の国”ですが、この勉強会は、単に対談の内容について意見を交わす場ではありませんでした。幅広い分野に及ぶ2人の語らいを学びながら、参加者は自らがなすべき“使命”を見いだしていったのです。そして、一人一人が、自分が世界を変えていくのだという“責任”と、真の弟子として広宣流布のために立ち上がっていくのだという“誇り”を胸に刻んだのす。 (イギリスSGI サミュエルズ理事長)
      (聖教新聞 2012-05-06)