最も情を大切にするのが四国だというのが、私の実感だ

2013年1月7日(月)更新:4
【新・人間革命 法旗 二十八】
 山本伸一は、管理者室にも顔を出した。
 県男子部長の木林周作の妻が、大声で泣く子どもを、一生懸命にあやしていた。彼女は、伸一を見ると、恐縮して頭を下げた。
 「いいんです。赤ん坊は、泣くのが仕事のようなものですから。元気に育つよ」
 部屋には、県事務長の妻で、会館の管理をしている築地美鈴と小学生の二人の子どもがいた。子どもたちは、伸一の姿を見ると、きちんと正座した。
 「どうぞ、お楽に! 少年部だね。未来が楽しみだな。将来は創価大学においでよ」
 そこに、県婦人部長の田淵良恵をはじめ、婦人部の県幹部が数人、打ち合わせのためにやってきた。ここでまた、伸一を囲んで懇談が始まった。首脳幹部らは、この日の伸一の指導は、これで終わりだと思った。しかし、午後十時半過ぎ、男子部の幹部二人に声をかけ、彼は風呂を借り、一緒に入浴しながら、懇談を重ねた。狭い浴室での語らいである。
 「四国創価学会を強くしていくためには、どうすればいいと思うかい」
 緊張していたのか、二人とも、しどろもどろの答えだった。
 「青年部の幹部は、一切の責任を担う覚悟で、どうすれば学会が前進できるのか、常に考えておくんだよ。また、四国という地域をどう発展させていくかも考えていくんだ。
 では、四国のリーダーに特に必要なものはなんだと思うかい」
 「…………」
 「私は、人情味だと思う。理や筋だけではだめだ。最も情を大切にするのが四国だというのが、私の実感だ。また、四国は、画一的ではうまくいかないだろう。たとえば、人材を育成する場合も、小さな単位でグループをつくり、それぞれの地域の特色を生かしながら、進めていくんだよ」
 彼らは、青年を育てようという伸一の心に感嘆した。湯船の中で感涙をこらえた。
 “先生は、ここまでされるのか……”
 行動こそ、万言に勝る指導となる。
   (聖教新聞 2013-01-07)