直接、手を握ることはできなくても、励ましの真心は必ず相手に届く

2013年1月18日(金)更新:3
【名字の言】
 母が娘に語る。「おむすびが、どうしておいしいのだか、知っていますか。あれはね、人間の指で握りしめて作るからですよ」。太宰治の『斜陽』の一シーンだ▼きょう1月17日は「おむすびの日」。18年前の阪神・淡路大震災では、炊き出しボランティアのおむすびに、多くの被災者が救われ、励まされた。この善意の心を留めようと、記念日になった▼先日、年始のあいさつに友人宅へうかがった。その際、「ご一緒にいかがですか」と、おむすびのもてなしを受けた。一昨年の東日本大震災で自宅を離れ、避難所で数日を過ごした友人の家族は、そこで手渡された一つのおにぎりを親子で分け合ったという▼誰が握ってくれたかは分からない。だが、ほのかにぬくもりが残っていたおむすびに、“一刻も早く被災者に!”との思いを感じた。「その人と心が結ばれたという希望が、“負けないで、生きていこう”という勇気になりました」。以来、「その思いを忘れまい」と、年頭、おせちに代えて、おむすびを味わうという▼「おむすび」は「恩結び」でもあるのだろう。直接、手を握ることはできなくても、握りしめた励ましの真心は必ず相手に届く。心は見えない。しかし、心はつながる。心は心を動かす。(城)
   (聖教新聞 2013-01-17)