教学 社会の繁栄の実現が仏法者の使命

2013年4月10日(水)更新:3
【池田華陽会 御書30編に学ぶ 減刧御書(下)】
《御文(1)》
 法華経の第一の巻の「諸法実相乃至唯仏と仏と乃(すなわ)ち能く究尽(くじん)し給う」ととかれて候はこれなり、本末究竟と申すは本とは悪のね善の根・末と申すは悪のをわり善の終りぞかし、善悪の根本枝葉をさとり極めたるを仏とは申すなり(中略)天台之を承(う)けて云く「一切世間の治生産業は皆実相と相違背せず」等云云、智者とは世間の法より外に仏法を行(おこなわ)ず、世間の治世の法を能く能く心へて候を智者とは申すなり(御書1466ページ10行目〜15行目)

《通解》 
 法華経の第1の巻の「諸法実相とは(中略)ただ仏と仏だけが、よく究(きわ)め尽くされている」と説かれているのは、このことである。
 「本末究竟」というのは、「本」とは悪の根本、善の根本であり、「末」というのは悪の結末、善の結末のことである。善悪の根本から枝葉まで、すべて悟り極めている方を仏というのである。(中略)
 天台はこれ(=法華経法師功徳品の文)を受けて、「一切の日常の生活や社会の営みは、みな実相に違背しない」と言っている。智者とは、世間の法から離れて仏法を行ずるのではない。世間において、世を治める法を十分に心得ている人を智者というのである。


《御文(2)》
 大悪は大善の来るべき瑞相なり、一閻浮提うちみだすならば閻浮提内広令流布はよも疑い候はじ(御書1467ページ5行目)

《通解》
 大悪は大善が来る前兆である。一閻浮提(全世界)が打ち乱れるならば、「閻浮提の内に広く流布せしめる」との経文通りになることは、よもや疑いあるまい。


〈解説 社会の繁栄の実現が仏法者の使命 “民衆を救う智者”との大確信を示す〉
 《御文(1)について》
●「根本」とは、善の根源である「法性」(悟り)と、悪の根源である「無明」(迷い)をさします。この善悪の根源が、幸・不幸として現実の上に現れていきます。この実際に現れた善悪のありさまを指して「枝葉」と仰せなのです。
 苦悩の外見だけでなく、その根本をとらえ、一切を幸福の方向へと転換するのが仏の智慧にほかなりません。この仏の智慧を体現し、民衆を救うのが真の「智者」です。
●生活、社会の事象すべてが、そのまま仏法である
●「智者」とは世間の法から離れて仏法を行ずるのではなく、実際に世を治める法を心得ている人である
●仏法の智慧を自身に現し、人々の苦悩を救う存在こそ智者なのです。

 《御文(2)について》
●大聖人は、世の中の不幸の根本原因を見抜き、民衆の幸福のため、社会に正義を打ち立てる「智者」としての戦いを貫いてこられました。
 しかし、当時の権力者は、大聖人を認めるどころか迫害を加え、亡きものにしようとしました。結局、何が正義かが分からない思想・精神の乱れが国の混乱を招き、やがて蒙古襲来をはじめとする不幸に国中が覆われてしまったのです。
 大聖人は、この現状を打ち破るかのように、「大悪は大善の来るべき瑞相なり」と仰せです。ここには、“大悪をも大善に転換してみせる”との深い決意と民衆救済の大慈悲が拝察されます。
●“全世界が混乱する時、妙法が全世界へ流布していくことは間違いない”と、大聖人の“太陽の仏法”が民衆救済の根本法であるとの大確信を示されています。
●苦悩に満ちた現実社会を安穏、幸福へと転じゆくために、大聖人は「智者」との自覚を胸に広布の道を進まれました。その精神を受け継ぐ私たちは、「仏法即社会」の精神を心に刻んで、人々の幸福への道を照らし出す勇気の対話に挑戦していきましょう。


《名誉会長の講義から》
 現実社会の民衆の嘆きを救うのが仏法です。すべてが行き詰まった末法の時代だからこそ、あらゆる旧弊(きゅうへい)を打ち破って根本から見直し、根源から出発して変革しようと動き出せるのです。大変革だからこそ当然抵抗はあります。しかし、そこにこそ新たな道が開けるのです。苦悩に充満したこの娑婆世界を、必ず幸福の楽土に転換していくことができる現実変革の誓願の宗教が、日蓮大聖人の仏法です。
 いわば「智者の闘争」があってこそ、閻浮提広宣流布は実現します。(中略)
 希望へ、幸福へ、安穏へ、平和へと、大悪を常に大善の方向へと転じていくのが、現実変革の宗教の証しです。
 戸田先生は言われました。
 「より高い文化、より高い科学は、より強き国家、より強き民族の力となり、しかして、いままでの状態は、総力を国家間の闘争に集中された時期があったが、これでは平和に逆行する以外の何ものでもない。人類の日常生活に科学が進めば進むほど、人間の横暴が強くなり、文化が進めば進むほど、人間はきょう慢を強めてきた。科学の進歩も、文化の発展も、人類の横暴、きょう慢、嫉妬、卑屈を、ますます強盛にしてきた結果になっていないであろうか。
 しからば、人類永遠の平和、地球の楽園を建設する原動力となるものは何か。それは、宗教でなくてはならない」
 「仏法即社会」の大道を歩み続ける創価の行動は、人類史に壮大な「立正安国」の希望の軌跡を光り輝かせていくのです。(「勝利の経典」『御書』に学ぶ 〈減刧御書〉から)


〈理解を深めよう 仏法の智慧の輝き〉
●池田名誉会長は、世界の識者との対話を通し、宗教や思想、文化の違いを超えて平和と友好の道筋を示し、世界中に信頼の輪を大きく広げてきました。
 それはまさに、「世界平和の実現」という大願に貫かれた、真剣な祈りと誠実な行動に現れる「仏法の智慧」の輝きにほかなりません。
 互いの違いを乗り越えて共通点を見いだし、共に人々の幸福への道を進む――仏界の生命は、目の前の一人の心を大きく広げ、相手の仏性を呼び覚ますことができるのです。
●名誉会長は、「『法華経智慧』とは、社会をよくして、民衆を幸せにしていく智慧です。そうでなければ仏法の智慧とは言えない」と語っています。
 友の幸福のために真剣に祈り、真心の励ましを送る――尊い人生を歩む私たちは、唱題を根本に仏法の智慧を輝かせながら信頼の絆を広げていきましょう。
   (聖教新聞 2013-04-08)