負の遺産

2013年9月6日(金)更新:3
【名字の言】
 長崎の原爆遺構(いこう)が先月、国の文化財に登録された。城山小学校(旧・城山国民学校)にある被爆校舎など4件。広島の原爆ドーム以来の登録である▼被爆校舎には、原爆の熱線による凄まじい焦げ跡が残る。爆心地から500メートルの同校では1400余人の児童、31人の教職員、105人の学徒報国(がくとほうこく)隊員らが亡くなった。戦後、建て替えや解体の話もあったが、原爆の脅威を伝える建築物として保存されてきた▼後世への戒めとなる遺構を「負の遺産」という。世界遺産にも、原爆ドームのほか、アウシュヴィッツ強制収容所アパルトヘイト(人種隔離)で政治犯を収容したロベン島などがある▼学会の沖縄研修道場にある「世界平和の碑」も、かつては核搭載可能ミサイルの発射基地。池田名誉会長が、解体せず、「永遠に残そう」と提案した。この決断を「意識の方向転換」と評するのは、佐喜眞(さきま)美術館の佐喜眞道夫館長。同館は返還された普天間基地の一部に立ち、丸木位里・俊さん夫妻が描いた「沖縄戦の図」を展示する。館長は、日本では凄惨な歴史を伝えるものは片付ける傾向が強く、不満だったという▼城山小の被爆校舎などを案内するガイドの言葉が心に残る。「目から消え去るものは心からも消え去る」(川)
   (聖教新聞 2013-09-06)