妙法に背いた罪による病は、妙法に帰することによってしか治らない

●名誉会長─何と言っても、戸田先生は鋭かった。現象を通して本質を見抜く天才だった。先生ほどの指導者は、ほかにいないでしょう。
はじめに話題になった、日本の敗戦と荒廃の姿──これは「諸法」です。それを見て、先生は、「大仏法興隆の時」であると叫ばれた。これこそ諸法実相の智慧ではないだろうか。逝去された年の「年頭の言葉」にも書かれていた。
「政治、労働、文化、経済、教育等々、各界がみな自界叛逆の相を呈して、五濁悪世の名にもれず、泥沼にうごめくがごとき状態を続けている。そして、これが一国謗法の総罰のすがたであるとは、だれも考えおよぶ者がいない」と。
●遠藤─具体的には何をさして、おっしゃったのでしょうか。
●名誉会長─政界では、組閣や閣僚ポストをめぐる内部分裂。労働界では、指導者層の、一般組合員層からの遊離。文化面では、健全な文化の育成を阻む学閥抗争──等々を挙げられていた。
●須田─そうした傾向は、今も変わっていません。問題は、なぜこうなるのか、だと思いますが。
●名誉会長─そう。戸田先生は、指摘された。
「もともと、あらゆる機構は相争うために生み出されたものではない。それは人類福祉のために考えられ、採用されたものであったはずである」
●斉藤─まったく、その通りです。
●名誉会長─そして結論的に、こう言われた。
「それにもかかわらず、いま、まったく反対機能の場となってしまった理由は、一国こぞって正法に反対し、これを説く者を迫害し、こぞって誹謗正法の罪をつくっているところにある。すなわち、日蓮大聖人の立正安国のお教えに背いているためなのである」と。
●遠藤─「立正安国論」で大聖人は、経文に照らして警告されました。人間の根本である思想・宗教が乱れ、それを放任したまま正法に目覚めないならば、その乱れは必ず国土・社会に反映するであろうと。
●名誉会長─思想・宗教の乱れとは、「諸法の実相」を見られない智慧の乱れであり、ひいては生命の乱れです。依正不二が実相であるゆえに、その「正報」の乱れが、「依報」である社会・国土にも不調和を起こすのです。
●須田─三災七難ですね。(中略)
●名誉会長─妙法に背いた罪による病は、妙法に帰することによってしか治らない。だから全民衆の幸福のためには、妙法の広宣流布しかないのだと叫ばれたのです。

(『法華経智慧 第一巻』 池田大作)