キーワードは「大局観」

2012年1月23日(月)更新:2
【名字の言】
 “永世棋聖(えいせいきせい)、敗れる”――今月14日の対局で、コンピューターの将棋ソフトが元トップ棋士米長邦雄氏を破った。チェスに続き、将棋でもコンピューターは人間を追い抜いた、と話題になった
 この将棋ソフトは、可能性のある手順を“しらみつぶし”に読む。1秒間に約1800万手も計算できる。情報処理のスピードでは、到底、人間はかなわない
 しかし、人間には、コンピューターに真似のできない手の読み方があるといわれる。そのキーワードは「大局観」だ。プロ棋士の第一人者である羽生善治氏は言う。「『ここは攻めるべきか』『守るべきか』『長い勝負にした方が得か』などの方針は、『大局観』から生まれる。複雑な状況で判断を下す時は、この『大局観』で無駄な『読み』を省略でき、正確性が高まり思考が速くなる」(『大局観』角川書店
 将棋の世界でいう「大局観」は、私たちの行動でいえば「人生観」「世界観」に通じるだろう。細かい情報を積み上げても、それをどう生かし、何のために使うかという哲学がなければ、情報は混乱を広げたり、悲劇さえ生む場合もある。現代の高度情報社会では、なおさらだ
 情報を「充実の人生」という価値に結びつける。私たちの信仰実践は、その力となる。 (聖教新聞 2012-01-23)