皆さんも題目を送ってください。そうすれば、生命が通じ合えるんです

2012年3月4日(日)更新:2
【新・人間革命 薫風 二十六】
●空には月が輝いていた。弓張月(ゆみはりづき)である。
 田部会館の門から玄関までは、数メートルほどで、右手には庭があった。
 その庭に沿って植えられた菖蒲の花が、建物から漏れる光と月明かりのなかに、ほのかに浮かんで見えた。
 山本伸一は、しばし、足を止め、月下の菖蒲を眺めていた。
 田部忠司が、伸一に言った。
 「この菖蒲は、先生にご覧いただけるかもしれないと、地元の有志が植えてくれました」
 「皆さんの、その真心がありがたいね。  また、田部さんには、会場を提供していただき、心から御礼申し上げます」
 こう言って伸一は、頭を下げた。田部は、感極まり、目頭が熱くなった。  
●田部は、花器販売の仕事をしていた。“広宣流布のために個人会館を建てさせてください”と、真剣に唱題を重ねていくと、仕事は予想以上に順調に伸び、土地も好条件で手に入れることができたのである。  
 広宣流布という大使命を果たそうとする時、わが身に地涌の菩薩の生命が現じる。そして、依正不二ゆえに、大宇宙をも動かしていくのである。広宣流布に生き抜く生命の大地にこそ、功徳の百花は開く。 (聖教新聞 2012-02-28)

【新・人間革命 薫風 二十七】
●隣近所のことも考えない非常識な信心は、長続きしないし、地域広布もできません。信心は、どこまでも、淡々と、水の流れるように実践し続けていくことが大事なんです
●勤行のあと、伸一は、各部に、簡潔に励ましの言葉を贈った。男子部には「勇んで苦労を!」、女子部には「教学で立とう!」、壮年部には「一家を守ってください!」、婦人部には「一家和楽の太陽に!」と――。
 彼は、さらに、魂を込めて訴えた。
 「今日、お会いできなかった方によろしくお伝えください。本当は、全員とお会いしたいが、会長は私一人だから、それはできません。海外の人たちも待っているんだもの。
 だから、日々、皆さんに、懸命にお題目を送っています。皆さんも題目を送ってください。そうすれば、生命が通じ合えるんです。いつも、私たちは一緒ですよ」
 「では、最後に」と、ピアノも弾いた。
 “広布のため、仏子のための、わが生涯である”というのが、伸一の覚悟であった。
 帰途、彼は、小倉の同志に歌を詠んだ。
  まごころの
    菖蒲に月も
      語りかけ
   小倉の友と
       会えし嬉しさ
 この歌を聞いた同志の胸に、希望の薫風が吹き抜けた。歓喜の花が大きく開いた。 (聖教新聞 2012-02-29)