「今日はゆっくり休み」

2012年4月3日(火)更新:5
【介護 読者の体験談 こころの絆】
 「帰って、今日はゆっくり休み」――病院にいた祖母と最後に交わした会話だ。
 私は幼い時から祖父母に育てられ、祖父が亡くなった後は、私が祖母を養っていた。
 祖母と2人で平和に暮らしていた中、突然に祖母の病が発覚。医師から「肝硬変と白血病で、手遅れです」と告げられた。
 入院する祖母のために、寝る間も惜しんで働いた。
 やがて認知症になった祖母が、病院で手足を縛られている姿を見るのがつらくなり、私は意を決した。自宅で一緒に寝泊まりするようにしたのだ。
 時には、ドラッグストアで、両手いっぱいに紙おむつを持つ私に対する、他人の冷たい視線がつらかった。
 一人で行う介護の大変さを、身に染みて感じた。自分との葛藤。必死で下(しも)の世話などもしたが、病状は悪化。私が誰かも分からなくなった祖母に、涙が止まらなかった。
 最後に病院で、祖母が息を引き取る前日に交わした言葉が、先の“温かい一言”だ。
 あれから数年――。転職し、介護福祉士として働く自分がいる。
ある日、利用者に同じ一言を言われ、走馬灯のように祖母のことを思い出した。祖母がいたからこそ、今の自分がいるのである。 (聖教新聞 2012-04-03)