信頼の絆基盤にした安全網(セーフティネット)を

2012年5月24日(木)更新:4
【社説】
 故郷の島を海軍に壊滅され、一人生き残った少女ニコ・ロビンは“悪魔の子”として追われ続ける。しかし、主人公ルフィたちと出会い、世界政府を敵に回しても命懸けで守ろうとする彼らの存在が希望となって、心から“生きたい!”と叫ぶ――尾田栄一郎氏の漫画「ONE PIECE(ワンピース)」の名場面の一つだ。人間関係の希薄さが指摘される若者に「仲間」という絆の尊さを教えてくれる。
 今月2日に発表された内閣府の意識調査で、成人男女の4人に1人が「自殺したいと思ったことがある」との実態が明らかになった。中でも20代が最も多く、3割弱が自殺を考えた経験をもつ。

〈“命守るとりで”の自覚持ち〉
 実際、20〜30代の死因のトップが自殺であり、昨年は「学生・生徒」で初めてその数が1000人を突破。全体では14年連続で3万人を超えている。
 また、自殺を考えた人の6割が、誰にも「相談したことはない」との統計もある。ゆえに自殺の危険を示すサインに気付き、適切に対応できる「ゲートキーパー」の存在が重要になる。
 わが国だけでなく、諸外国やWHO(世界保健機関)でも自殺対策に広く用いられている概念だ。私たち一人一人が“命を守るとりで”との自覚で、周囲の人々との関わりを大切にしていきたい。
 自殺の原因は、うつ病を含む健康問題が最も多く、借金など経済・生活問題や家庭不和、職場や学校の人間関係、就職難など、人それぞれである。一人で抱え込んでしまうと、悩みは深まるばかり。身近に相談できる人がいれば、話すことで解決の糸口が見つかったり、考え方が前向きに変わったりするものだ。

〈励ますことで生きる希望が〉
 先の意識調査では、自殺を考えた時にどう乗り越えたかとの問いに、「身近な人に悩みを聞いてもらった」が多数を占めた。自らの地域や職場、あるいは学校などで、悩みを分かち合い、励まし合える信頼関係を築く――そうした絆を基盤にしたセーフティーネット(安全網)を社会全体に広げていくことが、悲劇を防ぐ根本策となろう。
 池田名誉会長は「互いが励まし合い、元気を出せる絆の回復が『生きる力』の源泉となる」と語っている。
 私たちには、生命の本源から生きる力を呼び覚ます信心がある。進んで縁を結ぶことで、救える命があり、生きる希望を与えていけることを深く確信したい。した絆を基盤にしたセーフティーネット(安全網)を社会全体に広げていくことが、悲劇を防ぐ根本策となろう。
 池田名誉会長は「互いが励まし合い、元気を出せる絆の回復が『生きる力』の源泉となる」と語っている。
 私たちには、生命の本源から生きる力を呼び覚ます信心がある。進んで縁を結ぶことで、救える命があり、生きる希望を与えていけることを深く確信したい。 (聖教新聞 2012-05-24)