文化は『心の薬』

2012年8月1日(水)更新:1
【名字の言】
 大阪の大学に、民族音楽の研究者を訪ねた。インドネシア津波のときは現地へ飛び、民俗芸能の復活に取り組んだ。東日本大震災以降、岩手県の民俗芸能の復興支援に尽くしている
 「民俗芸能や伝統文化の復興なんて後でいい。まずは道路や建物などのインフラだ」と、しばしば批判されるらしい。もちろん、それらは必須だ。しかし「芸術・文化の復興」も「同時に大切」と語る。「なぜなら、文化は『心の薬』だから」
 被災地で会った支援団体の中心者も語っていた。「建物も大事。でもそれだけだったら、ミニ東京ができるだけ。若い人が『東京の方がいい』と、去って行くのも当然。文化の再生が大事です」
 その研究者は「東北、沖縄、アジア、世界各国、優れた芸術が残っているところを回って、一つの発見をした」と言う。「何度も、災害や災難に遭ってきた地域の文化・芸術は強くて深い」。なぜか? 「深い絶望の中で、生とは何か、死とは何か、自分は何のために生きているのかを、きっと先祖たちは何度も考え、未来への強い意志を持って生み出した。それが芸術に深みと強さを与えたのです」
 復興と再生に向かう人々に、心を合わせたい。その深い思いを共にする時、未来は少し変わるだろう。 (聖教新聞 2012-08-01)