心を育て、心を励ます

2012年9月18日(火)更新:5
【名字の言】
 “飢えた子どもたちに、文学は何ができるか”――そう問うたのは、フランスの哲学者サルトルだった。精神的な満足は、空腹という身体的欲求を満たせるか。そもそも、文学の使命とは――この問いは、古くて常に新しい
 昨年の大震災以来、多くの作家や芸術家が、同じ問いの前に立ち尽くした。そして、かけがえのないものを失った人たちを前に考えた。“今、文学や芸術にできることは何か”と
 東北で活躍する、こけし作家の壮年部員も悩んでいた。震災直後、工房にたたずみ、停電で動かない轆轤(ろくろ)を前に考え続けた。視線を移すと、心を込めて手がけたこけしたちが、慈愛のまなざしで、ほほ笑んでいた。「これだ」――最も苦しむ人たちに笑顔が戻るまで、“わが分身”を作り、励まし続けよう、と決めた
 池田名誉会長は「次代の建設とは、『人』をつくること」と論じ、その核心は、「『心』を育てること」と結論した。心を育て、心を励ます。壮年はそこに、「新生・東北の建設に尽くす使命を見いだしました」と
 「HEART」(心)の綴りの中には「ART」(芸術)が含まれている。心を磨き、思いの丈を表現した彼の新作は先ごろ、こけしの全国コンクールで「福島県知事賞」に輝いた。
   (聖教新聞 2012-09-18)