防災へ具体的な「自助」の準備を

2012年11月13日(火)更新:2
【社説】
 11月5日「津波防災の日」にちなみ、避難訓練やシンポジウムを開いて防災意識を高めた地域も数多くあった。昨年6月に定められ、今年2回目を迎えた。1854年のこの日に発生した安政南海地震による津波の際に住民を避難させた、現在の和歌山・広川町に伝わる「稲むらの火」が淵源となっている。
 防災は一過性のはやりであってはいけない――危機管理教育研究所の国崎信江代表は訴えている。巨大地震津波の発生確率が高いとされる今、あらためて防災への意識、備えを確認しておきたい。


〈夜間に自宅で訓練すると…〉
 防災には、「自助」「共助」「公助」の連動が重要だが、特に自分の力で自分や家族の命を守る「自助」が基本。災害発生時は、国・自治体の支援体制が整うまでに、目安として72時間必要とされており、助けが来るまでの3日間を生き延びる食料や衣料品を準備したい。
 津波が想定される地域では、地震が発生すると取るものも取りあえずという状況になる。「非常持ち出し袋は避難口に置く」、夜間の避難に備え「懐中電灯は各部屋に一つずつ置く」ことは、すぐにでも実行したい。夜間に電灯を消して、家族で避難訓練をしてみると、ほとんど動くことができず、互いの場所も声を出さないと分からないことに気付く。近隣も停電していると、逃げる先も分からない。理屈で理解しても命は守れない。具体的な対応策を考え実施することだ。
 外出先で被災することもある。避難経路の確認や、津波・土砂崩れなどの危険性を知り、いざという時の行動イメージを描くことも大事だ。防災教育に取り組む群馬大学大学院の片田敏孝教授は、避難3原則の一つに「想定にとらわれるな」を示す。各自治体のハザードマップをあえて疑い、防災に主体的な姿勢で臨むよう促している。


〈給水場所と病院の情報は?〉
 冒頭の国崎代表は、こうした自助に加え、公的支援を受けるためにも、命に関わる「水」(自宅から最も近い給水場所)と「病院」(災害時の医療体制)について情報をあらかじめ入手する必要性を指摘する。せっかくの公助も知らなければ有効活用できないからだ。普段から意識を持って、自治体などのホームページなどをチェックする習慣を付けよう。
 「いのちと申す物は一切の財の中に第一の財なり」(御書1596ページ)と仰せの通り、仏法者として、尊い生命を守り合う一人一人でありたい。
   (聖教新聞 2012-11-07)