種には必ず芽が出る時が来る

2013年2月5日(火)更新:3
【名字の言】
 中国で働く沖縄出身の壮年部の友。現地で知り合い、結婚した女性との心温まる話を聞いた▼結婚前、彼には気掛かりがあった。それは「彼女の家族は、日本人をどう思っているのだろう」ということ。日本の中国侵略の過去があるからだ。思いを告げると、彼女から「家族は、日本人に命を助けられ感謝している」と返ってきた▼日本と中国が戦争中だった70年ほど前。彼女の祖母らが住む集落に一人の日本人が駆け込み、「逃げろ」と告げた。おかげで戦闘を避け、命拾いしたという。その話は、壮年が祖父に聞いた中国での戦争体験と重なった。「中国で一人も殺さなかった」「民間人を助けた」。祖父が中国人を救ったという場所は、彼女の祖母らがいた集落と一致した。確証はないが、「その日本人は祖父に違いない」と彼は確信している▼祖父が残した”平和の種”は、70年の時と国境を超えて実を結んだ。種には必ず芽が出る時が来る――それを信じ、どんなに時間がかかろうと開花させていく。その行動が、戦争体験を風化させず、後世に語り継ぐことになる▼昨年11月、妻と幼い子ども3人で沖縄平和記念墓地公園を訪れた彼は、祖父の墓前で誓った。「おじーの体験は、ひ孫にも必ず伝えていくからね」(碧)
   (聖教新聞 2013-01-28)