友を思いやる温かな配慮と行動を大切にしたい

2013年3月29日(金)更新:3
【名字の言】
 “建築界のノーベル賞”と称されるプリツカー賞に、今年は伊東豊雄氏が選ばれた。日本人の受賞は6人目という快挙だ▼伊東氏は近著『あの日からの建築』(集英社新書)で、日本の伝統的建築の“曖昧さ”に注目している。自然に対して開かれ、部屋と部屋の関係も曖昧に連続している、と。縁側や、襖・障子を使った臨機応変な間取りなどは、その例だろう▼こうした曖昧さこそ、日本語という言語や人間関係の豊かさを保ってくれたものであり、建築で、この「内外の境界を曖昧にする」というテーマに挑戦したい、と伊東氏は述べる▼欧米社会では自分と他者の線引きが、より明確だ。日米の公認会計士の資格を持つ大阪の青年は当初、現地スタッフが業務領域をきっちり分けるやり方に戸惑った。だが、自分らしさを心掛け、互いの垣根を越えてサポート。帰国前、スタッフからは、心からの「ありがとう」の言葉。絆はさらに強まったという▼人間関係における曖昧さとは、言葉を変えれば“心の共有地”ということだろう。そこに積極的に立ち入ることで、人生は豊かになる。曖昧の「曖」には「日ざしがほのあたたかい」との意も(白川静『字通』)。友を思いやる温かな配慮と行動を大切にしたい。(馨)
   (聖教新聞 2013-03-29)