力になりたいと祈り、接する中に、相手に合った励まし方が見えてくる

2013年3月30日(土)更新:3
【名字の言】
 職人は、材料の中に命を見る。山梨・山中湖畔で評判の手打ちそば店を営む、職人歴23年の友から教わった▼味の9割は、そば粉で決まるという。「同じ粉でも、その日の気温や湿度によって別物になるんです」。色、香り、手触りを確かめ、「調子はどうだ?」と声を掛ける。状態を見極め、粉に加える水の加減や、そば生地をのばす厚さを微妙に変える。「どれだけ良質な粉でも、“いつもと同じ”と油断したら、本来の味は引き出せません」▼人間関係にも通じる話だと思った。元気な人、冷静な人。多弁な人、物静かな人。それぞれに傾向はあるが、例えば、明るい人が常に明るい気持ちでいるわけではない。内面は分からない▼「朝、子どもたちの顔を見た瞬間が勝負です」と、小学校教諭の教育部員が語っていた。「どんな元気な子でも、毎日、微妙に様子が違うものです。“家で叱られたかな”“何か悩んでいるな”と感じたら、ゆっくり話を聞くようにしています」▼仏法では、生命は絶えず変化し、一瞬も同じではないと説く。人を属性で分けて済ませるのではなく、「生命を見る」目を磨くことを教える。相手を分かりたい、力になりたいと祈り、接する中に、相手に合った励まし方が見えてくる。(之)
   (聖教新聞 2013-03-30)