信念、謙虚さ、感謝が成長の大事な要因

2013年4月8日(月)更新:5
【新・人間革命 勇将 四十七】
 近年、全国各地で医師である学会員の活躍が目立っていた。山本伸一は、二十一世紀を「生命の世紀」とするために、人間の生命に直接関わる医師など医療関係者の育成に、ことのほか力を注いできたのだ。
 医学の進歩は急速であり、日進月歩の勢いである。しかし、それによって、必ずしも人間が幸福になるとは限らない。進歩発展した医学を、真に人類の幸福実現の力にしていくためには、医療従事者が、“人間とは何か”“生命とは何か”を説き明かした、生命尊厳の思想と哲理をもたねばならない。
 人間を“モノ”としか見なければ、その医療は、人びとの幸福とは、著しくかけ離れたものとなろう。
 ゆえに伸一は、医師のメンバーに大きな期待をかけ、力の限り、励ましを送り続けてきた。それが次第に実を結びつつあったのだ。
 彼は、溝渕義弘に尋ねた。
 「医師として、患者さんに接するうえで、心がけていることはありますか」
 「はい。患部や病だけでなく、人間を見るようにしています。一個の人間として患者さんと向き合い、どうすれば、苦を取り除き、幸せになるお手伝いができるかを考えています。ですから、話をする場合も、カルテや検査の数値ばかりを見るのではなく、患者さんの目をしっかり見て、人間対人間として対話するように心がけています。
 私は、患者さんから実に多くのことを学ばせてもらっています。自分の説得力のなさや力不足、生命を見つめる眼の大切さなど、すべて患者さんと接触するなかで気づかされ、教えられました。
 患者さんこそ師匠であり、患者さんが医師としての私を育ててくれたんです。患者さんを、心のどこかで見下し、“自分が診てあげるのだ”などと思ったら、それは慢心です。いい医師にはなれません」
 伸一は、その言葉に感動を覚えた。溝渕には、信念があり、謙虚さがあり、感謝があった。それが成長の大事な要因といえよう。
   (聖教新聞 2013-04-08)