科学技術週間 共生と平和へ 知識生かす智慧

2013年4月22日(月)更新:4
【社説】
 先頃、新シリーズが始まったテレビドラマ「ガリレオ」は、天才物理学者が難事件にひそむ謎を、科学的に解明していく。推理ドラマに好みは分かれようが、理科離れが進む現代にあって、やさしく科学ネタを紹介していることが人気の一因でもあるのだろう。
 折しも今週は「科学技術週間」(21日まで)。全国の科学館や博物館、大学、研究機関など、多くの施設・団体で、科学技術を紹介するイベントが開かれる。専門家たちが語る「分かりやすい科学技術」に触れてみてはいかがだろうか。

〈探求心が発展の根底に〉
 昨年、ノーベル医学生理学賞に輝いた山中伸弥教授の壮挙も、記憶に新しい。さまざまな細胞に成長できる能力を持つ人工多能性幹細胞(iPS細胞)の開発が評価され、日本の希望となった。
 今年の同週間の標語は「何でだろう? そう思えばほらスタートライン」。身の回りにある不思議や疑問を、そのまま放置するのでなく、「何でだろう」と理由を探ってみる。疑ってみる。問うてみる。そこから科学的思考が始まる。
 星空を見上げて、どうして星は落ちてこないのかとの疑問を抱けば、天文学の世界が広がる。物質は何からできているんだろうと問えば、素粒子物理学の道へと通じていく。生物学や医学の発展の根底には、人間への探究心があったろう。
 内閣府が行った「科学技術と社会に関する世論調査」によると、実に75%の人々が「社会の新たな問題は科学技術によって解決されると思う」と答えている。
 総合科学技術会議が注目する最新科学技術は「再生医療」「炭素繊維」「省エネ技術」「ロボット技術」など幅広い。ただ、すぐ実現可能かというと、そうではない。基礎研究分野での成果は社会還元が難しいものも多い。

〈「何のためか」が問われる〉
 もとより科学そのものに善悪はない。問われるのは、「何のために使うか」だ。それが「戦争と科学の世紀」となった20世紀の教訓にほかならない。
 池田名誉会長は“高度な「知識」や最先端の「技術」、さらに膨大な「情報」を、「民衆の幸福と繁栄」のため、そして「地球社会の共生と平和」のため、正しく生かし切り、使いこなしていく源泉は智慧である”と述べている。
 科学知識も先端技術も、使う側次第といってよい。地球的問題群は目の前にある。人間と社会のための科学技術の利用が、今ほど求められる時代はない。
   (聖教新聞 2013-04-20)