情報に惑わされず真実を見抜く

2013年5月29日(水)更新:2
【社説】
 今夏の参院選以降、ネット選挙が解禁され、その動向に注目が集まっている。中でも、多くの人たちがネット上に発信する膨大な情報、いわゆる「ビッグデータ」から、集合的な意見を分析し、世論や国民感情をくみ取ろうとする動きに、熱い視線が注がれている。
 昨年の米大統領選挙では、ニューヨーク・タイムズ紙のネイト・シルバー記者が、ソーシャルメディア上でのコメント等の「ビッグデータ」に数理的な解析を施し、大統領選の勝敗予想を全50州で的中させ、大きな話題となった。

〈“声の大きさ”に偏る危険性〉
 東日本大震災後、被災地を中心にツイッターを通じて発信された情報は、1週間で約1億8000万件。ネット上には大量の検索履歴が残され、携帯電話のGPSや自動車のカーナビには、発災時の人々の動向が蓄積された。この“震災ビッグデータ”から新たな防災ツールを生み出そうと、産官学の垣根を越え、さまざまなプロジェクトも始動している。
 一方で、うわさや風評など、情報が玉石混交するネットの世界だけに、「ネットに氾濫する情報が世論をそのまま映す『鏡』になるとは限らない。(中略)インターネットがひとたび、声の大きな人たちの支配する『偏った空間』と化せばビッグデータの分析結果も有権者全体の意識・関心から乖離しかねない」(毎日新聞4月23日付)と指摘する声もある。
 人は社会の中で、新しい情報を取り込み、記憶と経験を組み合わせて、新たな自分をつくり上げる。そして、再び現実社会の中で、言葉や行動に託して、考えや感情を発信していく。その中で、「真実」をどう見極めるか――。

〈的確な判断力持つ境涯に〉
 池田名誉会長は語っている。
 「『事実』といっても、一断面のみ見れば、『真実』とまったく違った様相を呈する場合もある。また、同じ『事実』を前にしても、そのとらえ方、見方は、人によって異なる。歪んだ鏡には、すべてが歪んで映る。歪んだ心の人には、一切が歪んで見えてしまう。物事を見極める眼力――それは、みずからの“境涯”で決まる」(『池田大作全集』第79巻、第13回関西総会でのスピーチ)
 断片的な事実やデータから物事を判断するだけではなく、深く掘り下げた思索の中から、的確な判断力を持った揺るぎない境涯の自分を鍛え上げる。「知の人」であるとともに、哲学と信念を兼ね備えた「情報社会の賢者」でありたい。
   (聖教新聞 2013-05-25)