苦難の中にともった、小さいが確かな希望の灯

2013年5月31日(金)更新:4
【名字の言】
 職人が木製のじょうごを作ろうと、ろくろをひいている。金物では酒やしょうゆの味が変わってしまうと、他県の酒屋も求めに来るという▼製品はひいた後、4年ほど乾燥させてから仕上げの作業をするため、完成に長い年月がかかる。安価な品でも、それほどの心と手間を注ぐ“正直な仕事”は美しい。そんな話が柳宗悦『手仕事の日本』(岩波文庫)に紹介されていた。地味なことに真面目に命を注ぐ人がいる。その努力が見逃されず、評価されていると知れば、心が温かくなる▼原発事故などで福島県内外に避難した友の集いでのこと。会合終了後、ある壮年部員が一人の同志を見つけ、「会って、お礼を言いたかった」と涙ぐんでいた。その同志は、かつて同じ地域に住み、何度となく激励に足を運んでくれた人。しかし、そのたびに理屈を並べては敬遠してきた▼そこに大震災が起き、2人は別々の地に避難。壮年は痛感した。「見えも体裁も捨てて、信心根本に本物の人生を生きようって決めた時、真っ先に心に浮かんだのは、私の幸せを祈り、励まし続けてくれた、あなたでした」▼苦難の中にともった、小さいが確かな希望の灯。その光によって、飽(あ)かず諦めず、ともそうとした人の努力も照らされたのだ。(白)
   (聖教新聞 2013-05-28)