目の前の問題に、共に悪戦苦闘する。解けた瞬間に共に喜ぶ

2013年7月7日(日)更新:2
【名字の言】
 東日本大震災の被災地で子どもの支援をしている団体の講演会で、印象的な話を聞いた。講師は震災以前から長く、障がいのある子ども、虐待やいじめを受けた体験を持つ子どもの支援をしている▼病気などで学校に行けない子どもたちのために、学習支援もする。社会人や大学生のボランティアが「先生」となって教えるのだが、教科の選び方が面白い。「先生」たちが教えるのは、自分の不得意教科である。長年の経験から、そこには明らかな利点があるという▼得意教科を教えると、どうしても「教えてあげている」という「上から目線」となる。分からないつらさ、解けないもどかしさが、なかなか理解できない。時として、「こんなことも分からないのか」という傲慢な態度に陥る▼目の前の問題に、共に悪戦苦闘する。解けた瞬間に共に喜ぶ――これが、学習だけではなく、強く豊かな人間関係をつくり、しばしば最高の支援につながるという▼最近、介護や看護、福祉をはじめ、さまざまな分野で、「伴走」という言葉が注目されている。「同じ歩幅」で進む。「困難の坂」に共に汗し、解決法を共に探る。それは、一人を支えることでもあり、また、支え合う社会の建設につながる一歩となるはずだ。(哉)
   (聖教新聞 2013-07-07)