一瞬一瞬、自身を完全燃焼させて、全力でぶつかっていく以外にない

2013年7月10日(水)更新:4
・「『体曲れば影ななめなり』との御聖訓に絶対間違いはありません」
http://d.hatena.ne.jp/yoshie-blog/20170812


【新・人間革命 奮迅 五十七】
 川越地区の御書講義のあと、残った人たちから質問や相談を受けた山本伸一が、会場を出たのは午後十時近かった。池袋行の終電車に乗った。車内には、数人の乗客がいるだけであった。赤い顔をして、座席にもたれかかり、大いびきをかいている人もいる。
 伸一は、微笑みを浮かべ、鞄から葉書の束を取り出すと、万年筆を走らせた。
 このころ彼は、男子部の班長と、蒲田支部大森地区の地区委員(現在の地区部長)を兼務していた。さらに、地区講義の担当は、川越地区だけでなく、神奈川県の鶴見支部市場地区にもついており、九月七日には、初の講義に訪れていた。
 まさに彼は、戸田の心を体(たい)して、未来のために、埼玉と神奈川の、広宣流布の土台づくりに、真剣勝負で取り組んでいたのである。
 また、職場では、大東商工の営業部長であり、会社が軌道に乗るかどうかは、ひとえに彼の双肩にかかっていた。
 毎日が多忙極まりなかった。それだけに、地区員や男子部の班員と会って語り合う十分な時間が、なかなかもてなかったのである。
 だから、寸暇を惜しんで、激励の葉書や手紙を書くことを自らに義務づけていたのだ。
 池袋までの車中、次々と葉書を書いた。
 “断じてやり遂げよう”という強い一念があれば、工夫はいくらでも生まれる。反対にあきらめの心があれば、工夫の芽を自ら摘み取ってしまうことになる。
 伸一が、池袋駅に着いたのは、午後十一時前であった。夕食をとることができなかった彼は、屋台でラーメンをすすった。
 大田区大森のアパート「青葉荘」に着いた時には、既に午前零時を回っていた。それから御本尊に深い祈りを捧げた。
 伸一には、成すべき課題が山積していた。しかし、今、この瞬間にやれることは一つである。たくさんの課題を、時間という縦軸に置き換え、一瞬一瞬、自身を完全燃焼させて、全力でぶつかっていく以外にない。未来は「今」にある。勝利は「今」にある。
   (聖教新聞 2013-07-10)