教え込むよりも、発見を促す教育

2013年8月11日(日)更新:3
【名字の言】
 米国の言語学者チョムスキー氏は、人間の言語能力に関する独創的な理論と、歯に衣着せぬ政治批評で知られる。インタビューで“理想の教育”について問われると、ある教授の逸話を引き合いに出した▼「今学期はどんな内容をカバーする(扱う)のですか」。世界的に有名な物理学の教授が学生に聞かれた。教授はこう答えたという。「何をカバーするかは問題じゃない、重要なのは君らが何をディスカバー(発見)するかだ」(『知の逆転』NHK出版新書)。教え込むよりも、発見を促す教育に、氏は理想を見る。それが人間の発展へつながるからだ▼「発見を促す教育」とは、子どもたちの興味を引き出し、好奇心を育むものだろう。なぜバッタは後ろに跳ばないかを考えていた、ある小学3年生。やがて理由を見つけた。「後ろ脚が前に向かないから!」。なるほど、そういえばそうだ。男の子が、ちょっと誇らしげな顔をした▼チョムスキー氏は、若い人に推薦する本を聞かれた時も、“一番いいのは、自分で探して、驚くような、予想もしなかった本を発見すること”だと▼大人と子どもの時間の流れは違う。多忙な大人は答えを急ぎがちだが、じっとこらえよう。子らの心に、自ら発見する喜びを育みたい。(馨)
   (聖教新聞 2013-08-04)