「地域の安全力」を引き出そう

2013年10月10日(木)更新:7
【社説】
 「母さん助けて詐欺」とは振り込め詐欺の新名称だが、子を思う親心を巧みに突いた被害は後を絶たない。
 昨年、警視庁が行った実態調査では、被害者の8割以上が高齢の女性だった。そのほとんどが、詐欺について「自分は大丈夫だと思っていた」「まさか被害に遭うなんて……」と話す。息子になりすました犯人に気付かず、月に数回も連絡を取っていた人が半数に及ぶという。
 まったく油断も隙もない。「敵と申す者はわすれさせてねらふものなり」(御書1185ページ)との御金言の通り、犯人は用意周到に付け狙っていることを忘れてはならない。

〈住民の積極的な行動が肝要〉
 あす11日は「安全・安心なまちづくりの日」。窃盗など身近な犯罪の防止を目指し、20日まで「全国地域安全運動」が実施される。
 大阪府は本年、「ひったくり」の認知件数が873件(7月末現在)と全国最多。同府警は、自転車の防止カバーの使用やバッグをたすき掛けにして道路と反対側に持つことなどを一番に強調する。
 警視庁では、振り込め被害が集中する東京に、同詐欺への注意を喚起。さらに侵入窃盗、自転車盗、子どもの安全、サイバー犯罪等を重点に、具体的な対策と地域ぐるみでの協力を呼び掛けている。
 刑法犯の認知件数を見ると、意外にも10年前から連続で減少。ピーク時の半数以下となった。防犯カメラの設置など、近年の努力が一定の成果を挙げたといえる。ただ実感としては、依然、不安の方が大きいのが実情ではないだろうか。安全・安心な暮らしは、座して得られるものではなく、積極的に行動する中で勝ち取らなければならない。

〈近隣の絆も日頃の挨拶から〉
 ゆえに、自主的な防犯パトロールに協力するもよし。子どもや高齢者の見守り活動に参加するもよし。ウオーキングや犬の散歩を兼ねて楽しく取り組むことも安全活動を継続させるポイントだ。
 さらに、日頃から近隣住民と挨拶を交わし、触れ合いを重ねることが何より大切である。見知らぬ訪問者がいても、「どちらをお訪ねですか」と自然に声を掛ける雰囲気がつくられるからだ。
 そうした目に見えない「地域の絆」こそが、犯罪を防ぐ目となり、地域の安全を守る力となる。
 運動会や祭りなど地域行事がめじろ押しの秋。進んで外へ出て、友好と信頼を広げる実り多い日々を送りたい。
   (聖教新聞 2013-10-10)