思いを分かち合い、思いに応えようとすることで、人は強く優しくなる

2013年10月21日(月)更新:3
【名字の言】
 会館に置かれた給茶機の前に、幼稚園児くらいの姉弟(してい)がいた。コップを弟にそっと手渡した姉は、両手で大切そうに持って飲む弟に言った。「こぼしたらあかんで。お母さんに怒られるからな」「うん」。2人の胸にはいつも、母親がいるのだろう▼成長し、親元から巣立っても、母への思いは変わらないもの。照れもあろうが、感謝をなるべく形にしたい。ある女子部員と話して、あらためて思った▼国連職員を志し、NGO(非政府組織)に勤務する彼女。現在はラオスで村落開発に携わる。日本に住む母、仕事でオーストラリアにいる父とは、遠く海を隔てる。アメリ創価大学出身の彼女は、夢を追いながらも、創立者が常に呼び掛ける“親孝行”への思いを募らせた。電話はもちろん、現地での様子や風景の写真を両親に送ることを忘れない▼たとえ離れていても、時間を共有できる。使命に目覚め、生き生きと前へ進もうとする姿を示すこと以上の「感謝の形」はない▼ベートーベンの歌曲に「分かちあう楽しみは二倍になり 分かちあう悩みは、消え失せる」(『ベートーヴェン全集6 別冊』講談社、前田昭雄訳)とある。思いを分かち合い、思いに応えようとすることで、人は強く、優しくなる。(将)
   (聖教新聞 2013-10-21)