言上 7


ル・コント――作家はつねに自分について書く、とおっしゃっていますね。どうしてドストエフスキーは、ああいうすべてのものを自分のうちに見出だすことができたのですか。

シオラン――たくさん苦しんだからですよ。彼がそう言っています。それが認識なんですね。私たちが認識を獲得するのは苦しみによってであって、読書によってではない。読書には一種の距離があります。生こそほんとうの経験です。つまり、生において私たちはあらゆる挫折を経験することもできれば、またそこからさまざまの省察も生まれます。内的経験でないものは、すべて例外なくうすっぺらですよ。私たちは何千冊という本を読むことはできる。でもそんなものは、不幸の経験、私たちを震撼させるすべてのものとは違って、ほんとうの学校ではないでしょう。ドストエフスキーの生涯は地獄でした。彼はあらゆる試練、あらゆる緊張を経験した。おそらく彼は、内的経験においてもっとも深い作家です。限界にまで行きました。

シオラン対談集」より