世界に光彩を放つ“太陽の仏法”

【生活に生きる仏教講座 フランス語版「御書」が完成 SGI公認通訳(フランス語) 門口英治】
●フランス語(仏語)版『御書』が今月、池田SGI(創価学会インタナショナル)会長の欧州訪問50周年を記念して完成しました。五大部を含む172編を収録した1300ページに及ぶ本格的なものです。
●私は、仏語のSGI公認通訳として監修委員会委員長の大任を拝しました。総合監修の労を取ってくださったのは、フランスの仏教学者にして神学者のドゥニ・ジラ博士です。博士との4年間に及ぶ対話と協議の“窓口”を担当させていただきました。
鎌倉仏教の専門家であるジラ博士ご自身は、カトリックの信者であり、自らの信仰を見つめ直し深化させるために、日蓮大聖人の教えをひもといてきたという希有(けう)な方です。
博士は、キリスト教徒など、信仰を異にする人々にこそ、大聖人を“発見”してもらいたい。その精神闘争の歩みと日蓮仏法に内在する一貫性に目を見開いてもらいたいと、監修を引き受けてくださったのです。
博士は、カトリックの保守的な方々から時折、なぜ仏教の応援などするのかと、批判されることもあると打ち明けてくれました。
一方で、そうした非難に対して、神学者の友人たちが「何を言うか。苦難をものともしない生き方、万人を救済せんとするその使命感など、我々が最も共鳴する人物こそ日蓮ではないか」と、励ましてくれたとも博士は語っていました。今回の『御書』編さんを通して、宗教間対話の扉が大きく開かれていくのを感じます。大聖人の“太陽の仏法”は、国境や文化を越えて、大きな輝きと光彩を世界に広げているのです。

〈識者「折伏の実践は最高の慈悲の体現」〉
大聖人の透徹した実践を示す仰せに、「開目抄」の「難を忍び慈悲のすぐれたる事は・をそれをも・いだきぬべし」(御書202ページ)との御金言があります。
法華経に説かれる通りに大難と戦い、民衆を救おうとされる、大聖人の忍難と慈悲の振る舞いは、過去の偉大な仏法者をも凌(しの)ぐものであることを述べられた一節です。この御文をジラ博士も、じっくりと拝されたようです。
大聖人に初めて触れる仏語圏の読者のために、博士は「日蓮読解のための五つの鍵」という解説を、仏語版『御書』の序文として書いてくださいました。
その中に、「日蓮折伏によって最高の慈悲を体現したことを知らねばなりません」とあります。諸宗を批判する「四箇の格言」を表面的にとらえ、「不寛容」と非難してきた人々の浅薄な考えを打ち返す博士の理解に驚かされます。
また、ジラ博士はかねてより、釈尊の仏法が埋没してしまう「末法」という時代の“緊急性”を理解すれば、大聖人の峻厳さ、そして何としても苦悩する衆生を救済せずにはおくものかという大情熱が理解できると、講演などで主張してこられました。
仏語版『御書』を通して、仏法の本義を求め、如来の救済の本質に立ち還(かえ)れと叫ばれた大聖人のお心が、人々に生き生きと拝されていくことを心から期待したいと思います。

〈三代会長によって「仏法西還」が実現〉
今でこそ、御書が翻訳され、数々の言語で読むことができますが、そうした“時”の到来を考えておられたのが日興上人です。
日興上人は「本朝の聖語も広宣の日は亦(また)仮字(かな)を訳して梵震に通ず可し」(同1613ページ)と仰せです。これは、大聖人の仏法が広まる時、仮名交じり文で認(したた)められた御書を翻訳して、「梵震」すなわちインド、中国、ひいては世界へと伝えていくべきであるとの言葉です。
大聖人の仏法は、今や世界各地に広まり、南無妙法蓮華経の題目の音声(おんじょう)が地球を包んでいます。
「梵漢共時(ぼんかんぐじ)に南無妙法蓮華経と云うなり」(同708ページ)との「御義口伝」の御聖訓が感動をもって胸によみがえります。
「南無」は、「ナマス」等の梵語(サンスクリット)の音を漢字にあてはめたものです。言葉の意味は「帰命(きみょう)」です。
一方、「妙法蓮華経」は漢語です。「南無妙法蓮華経」は、これらを一つにしたものなので、大聖人は「梵漢共時」、すなわち“梵語、漢語が一体となって”と仰せになっているのです。それは、「南無妙法蓮華経」が全世界に広まるべき大法であると示されているとも拝されます。
今や世界に広がる大聖人の仏法が、その誕生から“世界”を志向していたことに感動を新たにします。同時に、「仏法西還」の仰せのままに、現実に日蓮仏法を世界に弘めてきた創価の師弟、なかんずく池田先生の不惜身命の闘争に感謝してもし尽くせるものではありません。
かつて、南仏トレッツの欧州研修道場で地元のメンバーと勤行した時、「皆地湧の菩薩の出現に非ずんば唱へがたき題目なり」(同1360ページ)との大聖人の仰せが胸に迫りました。
欧州だけでなく、アフリカ、北米、カリブ海等にも仏語を話すメンバーが数多くいます。そして、仏語圏に限らず全世界の同志が「南無妙法蓮華経」の題目を唱え、「御書」をひもときながら、求道と誓願の炎を燃やしています。仏法史上、これほどの快挙があったでしょうか。私たちは世界広布の時を今、師匠と共に迎えているのです。 (聖教新聞 2011-10-30)

10月31日更新:2