新・人間革命

2011年11月28日(月)更新:6
【新・人間革命 共戦 十四】
山内光元は、妻の照子の話に、口元をほころばせた。
「ほう、神札は駄目だというのか!面白いことを言う宗教だな。それは、正しいぞ。愉快だ。実に愉快だ。
俺は子どものころ、よく神札を作っていたから知っているが、ああいうものでは救われるわけがない。
神札や、ほかの対象物など、さっさと処分すればよい」
すると、妻は、安堵の表情を浮かべた。
「ああ、よかった。あなたが、そう言うと思って、もう燃やしておきました」
「そうか。一家で信仰がバラバラというのもよくないから、お前が信心をするなら、私もやろう」
山内夫妻が入会したのは、一九五六年(昭和三十一年)三月のことである。
妻の照子は、その日から、一生懸命に信心に励んだ。すると、いつも床に就き、生気のなかった彼女が、日ごとに元気になり、活動にも、はつらつと参加できるようになっていったのである。この体験が、仏法への確信となった。
山内光元は、入会したといっても、真剣に信心に励むつもりはなかった。しかし、妻の姿を見て、少しずつ心は動いていった。
学会の出版物をむさぼるように読み始めた。宗教には、浅深(せんじん)、高低、正邪があることも理解できた。何を信ずるかによって、人間の幸・不幸が決していくということも納得できた。人間の宿命は三世にわたり、過去世からの自身の行動、発言、意思によってつくられてきたことも学んだ。
入会から七カ月後の十月、山口開拓指導で山本伸一が下関を訪れ、座談会に出席した。
「皆、私たちは貧しい庶民かもしれない。しかし、本来の姿は、地湧の菩薩です。末法の人びとを幸福にするという広宣流布の聖業を果たすために、あえて宿業を背負って、この世に出現してきたんです」
その指導に、山内は息をのんだ。 (聖教新聞 2011-11-28)