金銭に執着していた自身の迷妄を猛省

2011年12月17日(土)更新:4
●3年後、夫が残した財産とあわせて、1500万円を貯蓄した。だが、多忙な毎日の中で御本尊に向かうことがおろそかになっていた。
 “お金さえあれば幸福になれる”。いつしか、そう信じるようになっていた。
(中略)
 「お金に目がくらむと、正常な気持ちまで狂ってしまうんですね」
(中略)
 先輩は厳しくも温かく励ましてくれた。
 「お金は戻らない。でも信心があるじゃないの。腹を決めて、乗り越えなさい」
 その日から真剣に題目を唱え始めた。「宿命転換をさせてください!」と御本尊にひたぶるに祈った。
 金銭に執着していた自身の迷妄を猛省した。ある日、すっと心が軽くなった。
「失ったお金への執着心が消えたんですね。その時、必ずやり直せると確信できたんです」
 石井さんに笑顔が戻った。
 しばらくすると、大きな転機が訪れた。
 隣に引っ越してきた同業者から、人手が足りないと相談を受け、手伝いに行った。
 男ばかりの職場にあって、誠実一路の石井さんの仕事ぶりは目を引いた。その姿を工事現場の責任者がじっと見ていた。「今後、うちで働いてみないか」。大手建設会社の社外工として働く道が開け、収入が安定した。
 その後、塗装業を継いだ3人の息子たちがたくましく成長した姿を見届け、石井さんは25年間の現場仕事を引退する。
 3階建ての自宅を新築、次男と三男にも家をもたせ、悠々自適の人生を歩む石井さんだが、「一番の功徳は、あの苦難の中で負けない心を築けたこと」と振り返る。
 苦労があったから、信心ができた。信心をしたから、強くなれた。
 「だから……」と石井さんは言う。
 「苦労と信心こそが、私の人生の最高の宝物なんです!」
 満面の笑顔が輝く。 (聖教新聞 2010-03-08)