科学技術週間 「生命の尊厳」第一の社会建設を

2012年4月19日(木)更新:3
【社説】
 プレートの跳ね上がりを止める「地震を抑えるネジロボット」、揺れない家を造る「ちょうでんどうじ石式フロートハウス」――これらは、子どもたちが未来の夢を描いたもの(未来の科学の夢絵画展)。どの絵にも、命を大切にしようとする思いがあふれている。その純粋な願いと同じく、科学技術は本来、人間の幸福を増大させるために進歩してきたことを、私たちは決して忘れてはならない。
 本年1月、科学技術政策研究所が科学技術に関する意識調査結果を発表した。

〈“心”はつくってくれない〉
 それによると、医療の進展や、災害から生活を守る分野で期待される一方、「人間は科学技術をコントロールできない」「科学技術の発展のみでさまざまな社会問題を解決するには限界がある」とする人の割合も増えた。期待とともに、不安を抱く人が多くなっている。
 現実に原発事故、遺伝子操作、生物・化学兵器の脅威など、人類が直面する問題は、地球上のあらゆる生命を脅かすものばかりである。
 池田名誉会長は「科学技術によって発展してきた現代文明も脆く崩れやすいことを、今、皆が痛感している。文明の在り方、人びとの生き方を足元から見直し、社会全体で、もう一歩、万全の備えを心していく時であろう」とつづっている。
 そのためには、科学への関心を失わず、その危険性を理解していくことが欠かせない。より大事なのは、使う私たち人間自身の変革だ。
 中国科学技術大学の朱清時学長は、名誉会長との会見で語った。「科学技術が進歩すれば、人間に力を与えます。役に立ちます。しかし、どんなに科学が進歩しても、人間の『よき心』をつくることはできない。素晴らしい人間を、その『心』を、科学はつくってはくれないのです」

〈「何のため」という視点から〉
 “もの”を扱う科学技術の視点から、生命尊厳の哲学は生まれない。“宗教なき科学は欠陥”とアインシュタインが指摘したように、「よき心」を育むためにも、宗教の役割は大きい。
 今週は、科学技術への理解と関心を広げるための「科学技術週間」(22日まで)。各地でさまざまなイベントも行われている。科学の夢に心を弾ませるだけでなく、もう一歩深く「何のため」という視点から、科学と日常の生活を見つめ直したい。子どもたちの絵のように、「生命の尊厳」を第一とする社会の建設こそ、私たち人間の責務だからだ。 (聖教新聞 2012-04-19)