「一人立つ」行動がひいては、多くの人の命を守ることにもなる

2012年4月30日(月)更新:2
【名字の言】
 都内3カ所にある東京消防庁の防災館では、震度7地震が体感できる。早速、池袋の同館に行ってみた
 揺れの体験も貴重だが、それ以上に実感したのは「声」の大切さ。救急体験では「だれか来てください!」、消火体験では「火事だ!」と、声を出すことを求められた
 災害心理学に「正常化の偏見」という言葉がある。人は、自分に都合の悪い情報を過小評価することで、心の平衡を保っている。命の危機が迫っても、危険を小さく見積もり、様子を見ようとしたり、周囲の反応を確かめようとする。そういうためらいの空気を打ち破るのが「声」なのである
 各地で防災教育に取り組んできた群馬大学の片田敏孝教授は、「防災地図」の作成など、行政主体の取り組みの負の作用として、「私たちは、いつの間にか、行政に身の安全を委ねるようになってしまった」と述べる。自然とじかに向き合い、自分の命を守ることに主体性をもつ。これこそ防災の出発点だ、と(『人が死なない防災』集英社新書
 いわば「一人立つ」精神が、防災においても要になるということだ。「声」も、その精神の表れであり、「一人立つ」行動がひいては、多くの人の命を守ることにもなる。私から、あなたから、備えを始めよう。 (聖教新聞 2012-04-26)