苦しい時こそ挑戦の心、前進の一歩を。その積み重ねの先に人生の勝利

2012年5月23日(水)更新:2
【名字の言】
 漫画家・手塚治虫氏が不遇を極めた時期の一つは、それまでの“手塚ブーム”が過ぎ去った昭和48年、自ら設立した会社が倒産した時だ。作家の大下英治氏は当時、週刊誌の記者として手塚氏を取材した
 失意のコメントを予想したが、手塚氏は普段通りに熱っぽく“明日から漫画賞を目指して頑張ります”と語った。すでに自身の名を冠した賞がある大御所の言葉に、大下氏は驚嘆した(大下英治著『手塚治虫――ロマン大宇宙』講談社
 “賞を目指す”といっても、手塚氏は、いわゆる名誉栄達を欲した訳ではない。“漫画の神様”との称賛に甘んじることなく、常に新しい分野に挑戦し、読者の支持を得られているかを、厳しく自身に問い続けたのだ。この後、『ブラック・ジャック』『アドルフに告ぐ』など、氏の代表作が誕生する
 過去の「いい時」を振り返るのは甘美なもの。苦境の時は、なおさらだ。しかし、御書には「月月・日日につより給へ」(1190ページ)と仰せである。日蓮大聖人は常々、門下に“さあ、これからだ”“今が未来の勝利を決める”との覚悟で難を乗り越え、大きく境涯を開いていくよう励まされた
 苦しい時こそ、挑戦の心、前進の一歩を。その積み重ねの先に、人生の勝利がある。 (聖教新聞 2012-05-23)