言葉を磨こう。そのために、心を磨こう。日々、生き方を磨こう

2012年5月27日(日)更新:2
【名字の言】
 「もう帰ろうよ」――懐かしいせりふを思い出す読者もいらっしゃるだろう。漫才コンビ松鶴家千代若(しょかくやちよわか)・千代菊(ちよきく)。千代若師のゆったりした栃木弁。「新相馬節(しんそうまぶし)」や「八木節」など、見事な技量で満場を唸らせたと思うと、ひょうきんな声で「疲れたから、もう帰ろうよ」。落差に、満場は大爆笑
 「もう帰ろうよ」には、背景がある。第2次世界大戦中、「寄席芸人」は「戦地慰問」に派遣された。千代若師も前線に。そこで見たのは、「士気高く勇敢な兵士」ではなかった
 一瞬一瞬が「死」と「殺」に隣り合わせの、疲れ果てた兵士たち。笑いで慰問するはずが、思わず声に出た。「みんな、もう帰ろうよ」。以降、反戦思想の持ち主と、憲兵に拘束されもした。殺されかけたことも。そんな人生を全部ひっさげての、舞台の軽妙さであった
 言葉は大切だ。日蓮大聖人は「言と云うは心の思いを響かして声を顕すを云うなり」(御書563ページ)と。言葉には「思い」が表れる。人生経験の深さは言葉に深みを与える
 大げさな表現は必要ない。ささいな励ましの言葉でも、人生経験が豊かで、相手への思いのあふれる人が語ると、深みが違う。言葉を磨こう。そのために、心を磨こう。日々、生き方を磨こう。 (聖教新聞 2012-05-27)