最愛の同志を、魔の餌食になどするものか! 絶対に死なせるものか!

2012年7月5日(木)更新:3
【新・人間革命 厚田 十八】
 東京で入院した伊藤順次は、医師から「胃潰瘍と十二指腸潰瘍を併発しています」と告げられた。彼は、病室で、“一生懸命に信心に励んできた自分が、なんでこんなことになるのだ!”と思った。
 そこに、副会長の森川一正が、山本伸一からの見舞いの花を持って病室を訪れた。
 「伊藤さん。先生は、『長年の疲れがたまっているのだから、ゆっくり静養し、元気になってください』と言われていました。
 また、仏法では、病の起こる六つの原因を明かしていますが、『伊藤さんの場合、北海道長として懸命に戦い、北海道の広宣流布を大きく前進させてきたから、魔が競い起こったのだ。魔の所為です』とおっしゃっていました。
 そして、『絶対に魔に負けてはいけない。魔は、魔と見破れば、必ず勝てる。唱題で一切を切り開いていくんです。私も、毎日、真剣にお題目を送ります』と言われ、すさまじい勢いで唱題してくださっていますよ。
 “最愛の同志を、魔の餌食になどするものか! 絶対に死なせるものか!”という、気迫にあふれた、懸命な題目です」
 それを聞くと、伊藤は、伸一へのありがたさ、申し訳なさと、自らのふがいなさで、涙が止まらなかった。
 数日後、手術が行われた。しかし、術後の経過は、決して好ましくなかった。
 病室には、何度となく学会の最高幹部が、伸一から伝言を預かって訪ねて来た。
 ある時の伝言には、こうあった。
 「早く元気になって、北海道の同志を、共に激励して歩こうよ。みんなが、あなたを待っているよ」
 伊藤は、目が覚めた思いがした。
 “そうだ。俺には、励ますべき同志がいるんだ!
 広宣流布という、大事な、大事な使命がある。負けてなんかいられるか!”
 その瞬間、全身に力がみなぎるのを覚えた。広宣流布の使命に生き抜こうとする一念に、地涌の菩薩の、仏の、大生命が脈打つのだ。  (聖教新聞 2012-07-05)