広布の戦いは色々な事がある。沢山の経験、歴史を積んでいく事が大事

2012年8月1日(水)更新:3
【新・人間革命 厚田 四十】
 山本伸一は、静かだが、力のこもった口調で語り始めた。
 「もし、皆さんが、仏法について、本当にお聞きになりたいのなら、お話しさせていただきます。まず、私の話を最後までお聞きください。仏法の概要について述べたあと、質問もお受けし、懇談いたしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですね」
 皆、呆気に取られたような顔で頷いた。
 伸一は、自分の入会の動機から話を起こして、人間は、信じる対象によって、大きな影響を受けていることを語った。そして、宗教とは根本となる教えであり、宗教のいかんが人間の生き方、考え方を決定づけるだけでなく、文化、社会の根底をなすことを訴えていった。さらに「日蓮大聖人の仏法とは何か」に言及した時、教員の一人が口を挟んだ。
 「日蓮は、仏教のなかでは異端なんじゃないかね」
 別の教員が、勢いづいて叫んだ。
 「日蓮は、排他的なんだよ。宗教間の争いを生む、危険思想じゃないか!」
 伸一は、それを手で制しながら言った。
 「私の話を、最後まで聞いてくださると約束されたではないですか! これでは、まともな語らいはできません。今日は、これで終了とします。解散しましょう。
 しかし、本当に話をお聞きになりたいのでしたら、また、いらしてください」
 教員たちは、中傷的な言辞を吐きながら、席を蹴るようにして帰っていった。また、石崎聖子が連れてきた、三、四人の婦人たちも、あいさつも早々に出て行った。
 聖子は、夫と共に、伸一を別室に案内すると、ひたすら詫びた。
 「山本室長、こんな座談会になってしまって、本当に申し訳ありません!」
 伸一は、さわやかな笑みを浮かべた。
 「広宣流布の戦いには、いろいろなことがあるものです。たくさんの経験、歴史を積んでいくことが大事なんです。今日は、忘れ得ぬ座談会の思い出ができたではないですか」  (聖教新聞 2012-08-01)