創価学会による仏教の復興は物質主義に対する日本からの回答だ―伯爵

2012年8月1日(水)更新:4
【橋を架ける 人間主義の未来へ 欧州統合の父 クーデンホーフ=カレルギー伯爵との出会いから45周年】
《池田SGI会長の「東西文明の対話」》
●対談の経緯、内容をみると、いくつかの共通点が浮かび上がる。
 第1は、池田会長と対談した知識人が、現代の行き過ぎた「物質文明」を克服し、ヒューマニズムを再生・創造する思想として仏教に注目し、その行動者として池田会長に期待していることである。
 「創価学会による、日本における仏教の復興は、世界的な物質主義に対する、日本からの回答であると思います」(クーデンホーフ=カレルギー伯爵)
 「外の資源は有限ですが、人間の内なる富は無限です。未開発です。これを引き出していくのが人間革命です」(ペッチェイ博士)
 「物質主義の砂漠を超えて、みずみずしい『内面の豊かさ』を復興させるべきです」「私は『新しき人間主義』を希望します。21世紀へ、池田会長と私との友情は、『精神の復興』のための精神の共同戦線です」(ユイグ氏)
 第2に、他者の評価よりも自身の目で見たことを信じ、一度結んだ友情は裏切らないということである。
 クーデンホーフ=カレルギー伯爵、ペッチェイ博士、ユイグ氏、マルロー氏をはじめ、池田会長との対談者には、ファシストと命を賭して戦った闘士がいた。そうした彼らにとって、他者が吹き込む創価学会の“評価”と、この目で見た池田会長と、どちらを信頼するかは自明のことであった。
 第3に、語らいが、「今」を論じつつも、「未来」を志向していること。それゆえ、時代を経ても、内容が色あせることがない。
 73年5月、トインビー博士との対談の最終日、テレビはある国の首脳会談のニュースを報じていた。博士は池田会長に言った。
 「政治家同士の対談に比べ、私たちの対談は地味かもしれません。しかし、私たちの語らいは、後世の人類のためのものです。
 このような対話こそが、未来の平和の道をつくるのです」


【欧州科学芸術アカデミー ウンガー会長に聞く 「人間的価値」のために闘う指導者】
 ――ウンガー会長は1997年以来、4度、池田SGI会長と語らいを重ね、対談集『人間主義の旗を――寛容・慈悲・対話』(東洋哲学研究所刊)を発刊されました。
●ウンガー会長 毎回、本当に充実した出会いでした。真剣な対話を通して、「私たちは人類に貢献できる」と確信しました。
 私と池田会長は、キリスト教と仏教の「宗教間対話」を推進してきました。語らいを進めるほど、双方の宗教観への理解が深まり、やがて“同じ考え方を共有している”ことに気づきました。

 ――池田会長の対話の足跡を一言で表すと「橋を架ける」であると思いますが、いかがでしょうか。
●ウンガー会長 池田会長は、卓越した「橋を架ける人」です。世界に多大なインパクトを与えた人です。私が知るだけでも、ゴルバチョフ大統領や周恩来首相など、世界的な指導者と対談を重ねておられます。
 そして、池田会長は人間的魅力に満ちあふれた方です。
 なぜ、それが大事か。それこそが、人の心を開かせるからです。池田会長は、相手の心を開かせ、心と心を共鳴させる対話の力、人格をお持ちなのです。
 私は池田会長の偉業を尊敬しているし、だからこそヨーロッパ科学芸術アカデミーは昨年、「平和の光」賞を授与させていただきました。

―池田会長との対談集『人間主義の旗を』の発刊から5年がたちました。この間にも、米欧の金融危機東日本大震災など、世界を揺るがす問題や災害が起きました。
●ウンガー会長 今、人類は深刻な事態に直面しています。価値観を失い、どこへ進めばいいか分からなくなっている。その最たる例が、昨今の金融危機です。
 私は、金融危機の本質には、「人間などどうでもいい」という倫理観の危機があると思う。人間的な価値の喪失が問題なのです。
 その意味でも、この「人間的な価値」を復活させようと努力してこられた池田会長は、大変に貴重な存在なのです。

 ――対談集でも、精神的価値を破壊する資本主義の負の側面に、警鐘が鳴らされていました。
●ウンガー会長 「資本主義(キャピタリズム)」などの、「主義(イズム)」という言葉が、私はあまり好きではありません。イデオロギーにとらわれると、人間本来の姿から、かけ離れていってしまうからです。
 資本主義は今、正当な労働を伴わずにお金儲けをする方向に走っています。お金に最大の価値を見いだすこと、これが間違っていると思います。
 お金は必要なものですが、それは生活のための「手段」であって、最優先のものにしてはならないのです。

 ――「人間的価値」の復権へ、どんな行動が必要でしょうか。
●ウンガー会長 念頭に置かなければいけないのは、世界の変革は、すぐにはできないということです。
 だからこそ、逆側からアプローチしていくことです。つまり、「一人一人の心を変える」ことが、究極的には環境をも変革していく。こうしたアプローチをとることです。
 池田会長はそのことを、対話を通して教えてくださったと思っています。

 ――青年世代が、続いていかなければなりませんね。
●ウンガー会長 池田会長の目をじっと見ていて、「未来を見つめている目」だと気づきました。そう気づいた時、「ああ、私たちは今、一緒に橋を架ける作業をしているのだ」「これからも、それを続けていくのだ」と深く確信することができました。
 次のステップとして、池田会長の架けた橋を「使う」「渡る」という行動が求められています。若い世代が、私たちの架けた橋を渡って、より深い相互理解を築いていっていただきたい。
 私自身も、その模範にならなければならないと思っています。
      (聖教新聞 2012-08-01)