「諸天は天鼓を撃って 常に衆の妓楽を作し」

2012年9月21日(金)更新:2
【名字の言】
 民主音楽協会民音)が主催する「東京国際音楽コンクール〈指揮〉」は、今秋で16回を数える。1967年から3年ごとに開催。アジアで随一の指揮者コンクールとして知られ、多くの音楽家を世界の楽壇へ送り出した
 第1回から審査委員となり、第4回から第10回まで審査委員長を務めたのが、日本を代表する指揮者の朝比奈隆氏。現在、東京・信濃町民音音楽博物館では、企画展示「朝比奈隆〜生涯現役を貫いた不滅の指揮者〜」が開かれている
 「わしは座るようになったらやめるよ」。そう語り、93歳で没するまで現役を貫いた朝比奈氏。歩行も容易でなくなった最後の公演でも、練習に取り組む楽員の音色を聞くと、見る見る血色が良くなる。指揮台に厳と立ち、タクトを振った。楽員はその雄姿に触れ、涙を流して演奏したという。同展で紹介された逸話だ。氏にとって、タクトを振ることが、生の源泉だったといえよう
 法華経寿量品の自我偈には「諸天は天鼓(てんく)を撃って 常に衆(もろもろ)の妓楽(ぎがく)を作(な)し」と。仏界の境涯は、生きる喜びの音楽に満ちていると説かれる
 自らの本源の使命を自覚し、生き抜く人の心は永遠に若い。生命力あふれる希望と確信の声を、私たちは社会に響かせていきたい。
   (聖教新聞 2012-09-21)