プラトンと仏教の共鳴 永遠普遍の真理を探求―マリノフ博士

2012年10月3日(水)更新:5
【アメリカ実践哲学協会会長・マリノフ博士と池田大作SGI会長の対談集 英語版が発刊】
●アメリカ実践哲学協会会長のルー・マリノフ博士と池田SGI(創価学会インタナショナル)会長の対談集の英語版『内なる哲学者――哲学の革新の力を語る』(邦題『哲学ルネサンスの対話』)が、このほどアメリカ・マサチューセッツ州ケンブリッジ市の池田国際対話センター(リチャード・ヨシマチ代表)から発刊された。これを記念する講演会が9月13日にニューヨーク文化会館、同21日に池田国際対話センターで開催され、教育関係者をはじめ多くの来賓が出席。マリノフ博士が「ルネサンス」や「対話」などをテーマに講演を行った。
 真に生命が尊重される21世紀へ、哲学に何ができるのか――。対談集では、現代社会の諸課題を哲学的に考察しつつ、語らいが進められている。
 マリノフ博士は、日々の生活において直面する問題に、古今東西の哲学を応用する「哲学カウンセリング」の先駆者。スウェーデンの脊髄損傷の患者やアメリカの矯正施設被収容者、各国の薬物乱用に苦しむ子ども、経済界のリーダー等に、幅広くカウンセリングを行ってきた。
 1998年に、アメリカ実践哲学協会を創立。現在は、ニューヨーク市立大学で哲学部長を務める「行動する哲人」である。
 博士は、人間の可能性を開発する仏教こそ人生変革への最も効果的な哲学であると考え、長年、SGIの平和・文化・教育の運動に注目してきた。
 SGI会長とは、これまで2003年と07年の2度、東京で出会いを刻む。03年には平和構築の貢献を讃えて、同協会からSGI会長に「人間哲学貢献賞」が授与された。
 その後、両者の対談は月刊誌「パンプキン」の08年6月号から09年の10月号まで連載され、10年に日本語版の対談集が完成した。
 今回、発刊された英語版には、各界の識者から推薦の言葉が寄せられている。
 「哲学の諸問題が的確かつ簡潔な文章で表現されており、心に光をもたらし、深い思索へと読者を導いてくれる」「素晴らしい平和の書」(国際平和教育研究所名誉創設者のベティー・リアドン氏)
 「人生の最も困難な問題でさえも知的、感情的な誠実さ、勇気、寛大さで包み込めるように、権威による支配から決別し、内なる資質を伸ばすよう啓発している」(デューイ研究センターのラリー・ヒックマン所長)

●講演でマリノフ博士は、カルマ(業)とは「行動」が結実したものであると指摘。この対談集もまた、自身と池田SGI会長が積み重ねてきた「行動」の産物であり、対話で互いを結ぼうと尽力してきたSGI会長の努力の賜であると語った。
 さらに博士は、これまで発刊されたSGI会長と世界の識者との対談集を紹介。ゴルバチョフソ連大統領との対談集は「国際関係学や政治学、哲学を学ぶ全ての学生の必読書」と述べた。
 ルネサンス期の思想をめぐっては、ラファエロの名画「アテナイの学童」を例に挙げながら、西洋における対話の意義を述べた。
 続いて博士はプラトンアリストテレスの思想と、仏教に共通する精神性について考察した。
 “宇宙には永遠普遍の真理が存在し、それ以外は全て移ろいゆく”としたプラトンと、“仏は個人としてではなく啓発の存在として永遠に存在する”とした仏教は深く共鳴していると論じた。
 さらに、アリストテレスは観念のみでなく行動を重んじた点で、より“大乗仏教的”であると指摘。大乗仏教で解かれる「菩薩」の実践は、古代ギリシャ哲学と深く通じていると述べた。
 また、哲学は誠実に懸命に生き抜く人間の生き方の中に脈打つと論じ、哲学者は、万人がもつ知恵、すなわち「内なる哲学者」を引き出すために存在すると強調。その実践の模範こそ、SGI会長であると語った。
 続いて博士は、社会が豊かになればなるほど、際限のない物質的富の追及を招き、逆に幸福感や道徳観が揺らいでくると分析。科学的な治療だけでなく、哲学的な治療こそが今、求められていると訴えた。
 そして「何が間違っているのか」よりも、「何が正しいのか」を考えるために時間を使うことが肝要であると力説。人間には限りない可能性があることを、本書を通して感じ取ってほしいと述べ、講演を締めくくった。
   (聖教新聞 2012-10-03)


●Relative happiness is happiness that depends on things outside ourselves, such as affluence or social standing. While the happiness such things bring us is certainly real, it shatters easily when external conditions alter. Absolute happiness, on the other hand, is something we must find within. It means establishing a state of life in which we are never defeated by difficulties, and where just being alive is a source of great joy. ーDaisaku Ikeda