植物たちは、逆境に抗して美しくなるのです

2012年10月16日(火)更新:1
【名字の言】
 秋の深まりとともに、日々、南下する紅葉前線。「今年の色づきはどうだろうか」といった会話も始まるころだ▼年ごとにモミジの染まり具合が変わるのはなぜか。それは「アントシアニン」という“紫外線から体を守る効果のある色素”のつくられ方に理由がある。“昼夜の寒暖差が激しく”“紫外線がよく当たる”ほど、この色素が多くつくられるという▼植物学者の田中修氏は「紫外線や強い光という有害なものが多ければ多いほど、植物たちは色あざやかに魅力的になるのです。植物たちは、逆境に抗して美しくなるのです」と述べる(『植物はすごい』中公新書)▼だからこそ人は、わが身の最終章を、燃え上がるような美しさで飾る一葉一葉に、人生を重ねるのだろうか。「濃紅葉に涙せきくる如何にせん」(高浜虚子)▼苦労を経験した分だけ、自らの境涯が大きく広がる。苦衷の友に、心の底から寄り添えるようになる。そうした円熟の先輩の存在があってこそ、青年という若木も、伸び伸びと育っていくことができる。御書に「春種子を下して秋菓(み)を取るべし」(503ページ)と仰せ。秋とは集大成の時である。現実社会の厳しさに負けず、立ち向かい、完全燃焼で「青年学会 拡大の年」を勝ち飾りたい。(明)
   (聖教新聞 2012-10-16)