負けなかったんだねえ

2012年10月20日(土)更新:1
【名字の言】
 台風一過のある日。会館ロビーから中庭を見つめる婦人がいた。声を掛けると静かに語った。「昨夜の暴風雨で倒れていないかと心配で、ずっと題目あげて……。今朝来たら、けなげにスッと立っていて。本当に良かったよ」▼視線の先には1本の若木東日本大震災の被災地の会館に、今春、植えられた「福光桜」だ。彼女は植樹式には出席していない。だが、本紙の報道で、地元の会館にも植樹されたと知り、復興の歩みに思いを重ね、自身の“福光の木”ともなったのだ▼「負けなかったんだねえ」。彼女にとって、桜は、木であって木ではない。春の開花を目指す桜は、懸命に人生の春への旅路を行く“もう一人の自分”と映る。大地に根を張り、試練に耐えた若木の姿に、決意を新たにしていた▼「3・11」から1年7カ月あまり。新天地で立ち上がった友から、うれしい便りが届く。「無冠の友(本紙配達員)になりました」「牙城会の任務に就きました」……▼「風雪に揺るがぬ王者の桜は、見る人を励ましてやまない」と、池田名誉会長は東北の友に贈った。みちのくの秋は駆け足で巡り、やがて厳しい冬がやってくる。心に信心という“必ず咲く桜”を植えた友は、試練と戦う強さを持っている。(城)
   (聖教新聞 2012-10-18)