他者でも環境でもない。自分自身で決まる。そのための信仰である

2012年10月20日(土)更新:5
【名字の言】
 人の持っている長所と短所は本来、表裏一体だ。「わがまま」は「自分に正直」とも言えるし、「引っ込み思案」は「慎み深い」とも言える。短所は長所になるし、長所は短所にもなる▼スポーツライター等で活躍する乙武洋匡氏と、若手書道家武田双雲氏の対談集『だからこそできること』(主婦の友社)を読んだ▼生まれつき手足のない乙武氏が言う。「何かもうちょっとみんなとの違いというものを意識しながら生きていかないと、宝の持ち腐れだなと思った」と。手足のないことを「宝」と捉える強さ。すごい一言だ。氏は小学校の教諭を経験し、保育園の開設にも尽力している▼一方、武田氏によると、経験が物を言う書道の世界では、若いことがハンディになるという。しかし氏は「若いからできることがいっぱいある」と捉え、音楽家や彫刻家などと連携し、独自の創作活動に打ち込む▼人が生きていくための最大の“資源”は、富でも名声でもなく、自分自身だ。法華経に「無上の宝聚は 求めざるに自ら得たり」と説かれるように、人生を輝かせるか否かは、生命の無限の可能性に気付き、磨いていけるかどうかにかかっている。他者でも環境でもない。自分自身で決まる。そのための信仰である。(敬)
   (聖教新聞 2012-10-19)