友を思う誠実さこそ、納得を生み、新しい時代をつくる力となる

2012年10月30日(火)更新:5
【名字の言】
 近世の沖縄を代表する政治家の程順則(名護親方)――。庶民の教育に力を注ぎ、琉球初の学校「明倫堂」を設立した教育者でもあった▼少年時代の順則に、こんなエピソードがある。ある日、近くにいたニワトリを捕まえてきた友人から、「このニワトリを食べよう」と誘われた。順則は「そのニワトリは、君のものではないだろう」と止めるが、友は耳を貸さない。「ならば、私の家で料理しよう」と自宅に招き、ニワトリをごちそうした▼数日後、友人は、食したはずのニワトリが生きているのを見る。実は、順則は、自分の家のニワトリを処分し、食べさせてくれたのだ。誠意をもって、過ちを正そうとした順則に、友人は深く恥じ入ったという▼御書に「汝蘭室の友に交りて麻畝の性と成る」(31ページ)と説かれている。「蘭室の友」とは、良い影響を与えてくれる友のこと。こうした友と交わることで、蓬(よもぎ)のように曲がった心が素直になる、との仰せである▼順則は、わが身の振る舞いで、正しい行いを示した。「説得」より「納得」を重んじる姿勢は、時代を超えて大切なことを教えてくれる。人は納得すれば、考えを変え、行動を変える。友を思う誠実さこそ、納得を生み、新しい時代をつくる力となる。(碧)
   (聖教新聞 2012-10-28)